- 34 / 45 ページ
薔薇
「異動……ですか?」
「そうだ、シム・チャンミン。日頃の仕事ぶりが評価されたんだな。おめでとう」
本社へ異動が決まった。それ自体は嬉しいこと。
「そっか。寂しくなるな」
真っ先にキュヒョンに伝えた。友達だから、離れても会おうと思えば会える。
でも、ユノには会えなくなる可能性が高い。会う理由がないからだ。
「落ち着いたら泊まりに来いよ」
「お前もな。何年?」
「とりあえず一年。あとは状況によるって」
月末に送別会があって、来月からはもう本社勤務だ。
ユノに会う機会があるかさえわからない。
あの日から仕事でもすれ違いが続き、姿を見ないことがほとんど。運良く会えても朝くらいだ。
俺に興味はなくても、人事を知らないはずはない。もしかしたら。
せいせいしたと思っているかもしれない。
誰かの差し金で飛ばされるなら、本社に行くことはないだろう。この人事は正当なものだと思いたい。
送別会の日が迫っている。家に帰るとクタクタで何もする気が起きない。
それでも、会いたくて電話する。寝転がりうとうとしながら、コール音を何回も聞いて。
手が滑り落ちそうになった瞬間、コール音が切れた。
「……あ」
「何か用か」
低く不機嫌な声が耳元で響く。途端に目が覚めて。
あの日広げられた手に札を握らせたことを、改めて後悔した。
「そうだ、シム・チャンミン。日頃の仕事ぶりが評価されたんだな。おめでとう」
本社へ異動が決まった。それ自体は嬉しいこと。
「そっか。寂しくなるな」
真っ先にキュヒョンに伝えた。友達だから、離れても会おうと思えば会える。
でも、ユノには会えなくなる可能性が高い。会う理由がないからだ。
「落ち着いたら泊まりに来いよ」
「お前もな。何年?」
「とりあえず一年。あとは状況によるって」
月末に送別会があって、来月からはもう本社勤務だ。
ユノに会う機会があるかさえわからない。
あの日から仕事でもすれ違いが続き、姿を見ないことがほとんど。運良く会えても朝くらいだ。
俺に興味はなくても、人事を知らないはずはない。もしかしたら。
せいせいしたと思っているかもしれない。
誰かの差し金で飛ばされるなら、本社に行くことはないだろう。この人事は正当なものだと思いたい。
送別会の日が迫っている。家に帰るとクタクタで何もする気が起きない。
それでも、会いたくて電話する。寝転がりうとうとしながら、コール音を何回も聞いて。
手が滑り落ちそうになった瞬間、コール音が切れた。
「……あ」
「何か用か」
低く不機嫌な声が耳元で響く。途端に目が覚めて。
あの日広げられた手に札を握らせたことを、改めて後悔した。
更新日:2020-08-09 18:59:25