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謂いたい事も言えないこんな世の中

 反町隆史主演のドラマGTOの主題歌ポイズンにはこんなフレーズが頭に残る……『言いたい事も言えないこんな世の中』を。今の僕が生きている此の世界は何も言えない空間が広がる。えっと今の時代は何だったかな?

 段落を変えて少しずつ紹介しよう。僕は鬩合心(セメギアイ シン)、人からはシンと呼ばれている。僕が生きる時代、平成、令和……を越えた御寿十八年。一体何時の時代なのか? 令和天皇から何代先なのか? 其れは最早わからなく成った。メリークリスマスがハッピーホリデイに改名されたりスチュワーデスがキャビンアテンダントにされたりするのと同じ位に最早僕達にはわからない遥か未来だね。其れでも日本古来の元号制度が未だ残る遥か未来の時代だと思ったらわかりやすいかな?

 段落を又変えて場所は何処か? 元号からすれば日本だ。其の日本の此処大阪府のH市にて物語は始まる。僕は高校二年生。十七歳位かな? 友達は其れなりに居て女の子の知りも追い掛ける極普通の少年だった気がする。そんなに頭も良くないから所謂大衆に位置する人間だと僕は思う。

 あ、そうだ。通学中に右隣には舟橋克之(フナハシ カツユキ)、愛称はカツと左隣には棚岡美姫(タナオカ ミキ)で愛称はタナボタの二人と一緒に他愛もなく通学していたな。

「へえ、タナボタは又髪を染めたんだ。先生に注意されるぞ!」

「そん時はカツがあたいを庇ってよ」

「オイオイ、俺様に又迷惑を掛けるのかよ。とんでもないビッチだな!」

「五月蠅いわ、タナボタと呼ばれる方が未だマシよ!」

 唯の他愛のない会話だった……「其処の君。君は確か其の少女を『ビッチ』と呼んだそうだな?」

「え? いやあ冗談だけど?」

「ヘイトスピーチ法違反に依り、現行犯逮捕する!」

「え? え? 待った待ったああ!」

「ちょ、ちょま……何よ、何でカツが手錠掛けられるん?」

 此れが僕を普通じゃない世界へと誘う……

更新日:2020-07-29 04:27:47

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成るべく新作をお送りする客寄せに作る掌編集