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モシモ

僕が生きてる時代は、「AIがすごい」というのが常識になりつつあり、どこにもその不思議を感じないようになっている。

2XXX年
とあるIT系企業が開発した、とんでもないロボットが開発された。

お友達ロボット「モシモ」
「もしもし」と気軽に呼べる愛嬌さから、来ているらしい。

昔は、ロボットの関節は丸っこくて、いかにもロボットぽかった。
けれど、このロボット「モシモ」は違う。
まるで僕たち少年と同じように、姿かたちがそっくりなのだ。
違いがあるとすれば、水も食べ物もいらず、ただ充電する程度で、汗もかかず、トイレにも行かない。
動きに多少のぎこちなさもあるが、それも”愛嬌”なのだ。

そのロボット「モシモ」は、僕のクラスにやってきた。
実験的に配備したいとのことで、うちの校長が了承したらしい。
なんでも、うちの校長はそうした新技術などを受け入れるのが大好きで、科学がもたらす明るい未来を信じている。子供たちにも吹聴する。

当然、大人たちの誰かは反対した。
「そんなの何の意味があるのか」
と。

子供だって、一応不安みたいなものもある。
本当に友達ロボットなだけだろうか。
実はテロリストロボだったりして…なんて。
でも、想像することごとくは、僕たちの想像を楽しませ、なぜか警戒する気持ちを失わせた。むしろ、気持ちはワクワクだ。

そんなこんなで、論争合戦されながらも、実践された「モシモ」
性別は男らしい。僕と同じだ。

モシモは僕の隣の席。どちらかと言えば、外の窓側に一番近く、そして一番後ろの隅っこ。角の席だ。

モシモは皆に注目され、僕の座る席などないぐらいの勢いだった。
だって、上級性も下級生もみんな来るんだもん。
だから、僕の席は相変わらずぐちゃぐちゃのまま放っておかれて、授業の時だけモシモの隣にいる。

はじめての挨拶以来、少ししかお話をしない。
けれど、いつの頃だったか、授業中でも喋るようになってきたんだ。

「モシモ君ってさ、勉強する必要ないよね」
「どうして?」
「だってロボットだもん。なんでも知ってるんでしょ?」
「それがね。最新の技術では、ロボットにも自動学習機能を付けようとする実験をしているんだ。だから、授業を受ける。たしかに、必要はないかもだけど」
「変なの。いいなぁ。僕もロボットになって、授業も学校もなくて、ゲーム三昧でさぁ。働かなくたっていいし、ずっと放っておかれても平気だもんね。死にもしないから怖くないし。あ、それならメッチャカッコイイパーツ点けて、ドカーンと敵と戦ってみたいなぁ!ねぇ、そういうのないの?」
「うぅーん。そういうのはないんじゃないかな。さすがに銃は持たせてもらえないよ」
「知ってるよ。ジョーダン。ジョーダン。モシモ君は真面目だなぁ」
「へへ…ちょっと学習したかも。今度カッコイイパーツでもお願いしようかな」
「その方がいいよ!飛行パーツとか付けてさ」

「そこ!お喋りしない!」

「ちぇー怒られた」
「ふふふ」
「なに笑ってんだよー」
「あぁ、面白い。人間ってダイスキ」

夕方
「へ?一緒に帰る?なんで?」
「ちょっとそこまで用事があるんだ。一緒にいてもいいでしょ?」
「…悪くないけどさぁ。けど、ちょっと近いっていうか…あ、もしかしてそういう性癖まであるの?」
「ないない!一緒に行こうよ!ね?お願い!」
「しょうがないなぁ…」

「モシモ君は家はどこなの?」
「家はないんだ。家族もいない。ご飯も必要ないし、お風呂なんて入ったら大変だよ。僕死んじゃう。」
「そうだよね。給食の時はいつも食べないもんね。みんな水に気を付けてるし」
「悪いとは思ってるよ。僕のせいでみんな普通じゃいられないもん」
「いやぁ、僕たちのクラスはみんな喜んでるよ。その内モシモ2号が登場して、楽しくなれるといいね!」
「うん…」

「…」
「…」
「あのさ。A君」
「なに?モシモ君?」
「君って、もしかしてあまりクラスの子が好きじゃないの?」
「…どうして?」
「だって、僕以外とそんなに喋んないもの」
「…」
「僕ならね。君と友達になれる。」
「…」
「なろうよ。友達に」
「…いいよ。じゃあ、指切りしよう」
「ユビキリ?」
「そうだよ。指切り。約束事をするときはいつもそうするんだ」
「イイヨ。じゃあ、しようじゃないか」
「僕と友達になる。絶対に裏切らない。指切った。嘘ついたら針千本だからね。えへへ…」
「ヘエ。ハリセンボンね
 …学習した。」

この日から、僕とモシモは友達になったんだ。
放課後はこそこそ二人になって、一緒に遊んだ。モシモはモテるから結構大変だったらしい。けど、嬉しそうだ。

「僕ね。嬉しいんだ」
「どうして?」
「僕に会う人みんなロボとして見るんだ」
「うん」
「でも、君は違う。僕のモシモとしての友達になってくれる」
「…」
「君は理想の友達だね」

僕だってそうさ。
君が理想の友達だよ。モシモ。

更新日:2020-06-23 12:10:06

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