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第7話 闇のオークションと男の顔


 地球でも世界の各国で治安が悪いという国は幾らでもある。
 それと同じくして、ここ火星でも、ある意味治安が悪い場所…
 その地域は数多く存在する。
 かの機械生命体による災害は、先の通りこの火星の人々に
 甚大な被害を及ぼした。
 そしてその後、ある「もの」を巡って、多くのシンジケートや
 マフィアが横行するようになったわけだが、結果彼らもまた、
 互いにある意味の「戦争」を始めるようになった。
 いわゆる、「縄張り争い」というものである。

 …エイモス・イルヴァーナは、軍をはじめとして、マフィアや
 シンジケートとも多くの取引がある。
 それゆえに、外部の情報を仕入れることはたやすいことだ。
 また、これはモビルスーツに必要な様々な部品を手に入れる
 ために貴重な情報であり、時に入手困難なものや、
 滅多にお目にかかれない「掘り出し物」を手に入れるためでも
 あった。

  「闇のオークション…?」

 その言葉は、ミシェルも幾らか聞いたことがある。
 兼ねてから噂には聞いていたが…エイモスにとっては
 日常茶飯事で、よくそれを利用することがあるらしい。
 なぜなら…そこには彼にとって、とんでもない「お宝」が出品
 される場合があるからだ。

  「…そうだ。実はな、偶然にも先日、ある王家が残骸の一部
  だが『ガンダムフレーム』らしき機体を出品したという
  情報を手に入れた。ついては、今回のダンタリオンの大幅な
  改修のためにこれを入手しようと思っている」

 またとんでもないことを…。
 ミシェルはエイモスのその大胆な行為に驚かされる。
 …だがダンタリオンの改修のためには、まさに最適な方法
 とはいえる。
 なにしろ、もしそれを手に入れることができたなら、それを
 丸ごと使えば用は済むからだ。

  「ところでその…実際のモノは…いや、オークションは
  何処で行われているんだ?」

 「闇のオークション」と呼ばれている催しである。
 そう簡単に公にそこらで開催されるものではないはずだ。

  「フフ、これはあくまでもネットオークション上で
  行われる。但し、特定の相手にしか、そのサイトや情報は
  観ることはできない」

 エイモスは得意げに端末のキーボードを叩く。
 すると、画面になにやら怪しげなマークが表示された後、
 別のサイトが開き、そこに多くの「その筋」の商品が出品されて
 いるのがわかった。

  「これは…ほとんどが軍事兵器ばかりじゃないか!?」

 出品されているそれをみて、ミシェルはあらためて驚く。
 中にはなんと…軍以外で取引が禁止されている弾薬や武器
 までがあたりまえのように出品されていた。
 そこには噂に聞いている、「ダウンスレイブ」というものも
 ある。

  「こいつだ」

 …そこには画像が表示されていないが…なにやら意味ありげな
 文字の羅列があった。
 ミシェルはそれに目をやった。

  「…『ASW-G-29の残骸…出品者…、…ある筋から借金のカタに
  買い取った極上品…』…。…!この羅列は確か…」
  「間違いなく、ガンダムフレームのものだ。その個体名は、
  調べたところによると、『アスタロト』と呼ばれるやつだ」

 アスタロト…。
 聞いたことのない名前だ。

  「一体、どんなモビルスーツなんだ?」

 ミシェルは興味深げに尋ねる。

  「数あるガンダムの機体の中でも、簡易的なものだが、
  飛行することが可能らしい。…まぁ残骸だから、どれだけの
  部品が残っているかだが…この分だと、よくてフレーム
  くらいだろうな」

 それから間もなく、エイモス宛てに一通のメールが送られて
 きた。
 …どうやら「それ」を無事、落札できた様だが…果たして相手が
 「まともなやつ」なのか、それは実際に出品されたものをここへ
 送ってもらうか、或いは…或いは実際に相手に直接会ってみる
 しか方法はない。

  「念のために銃を持って行ってくれ。…もっとも君は軍出身
  だから心配はないと思うが…」

 それはまた随分と危険だな。
 そう思いながらも、ミシェルは後日、ケイトスと共に
 その相手に会うこととなった。

更新日:2020-10-13 08:35:58

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