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第3話 ガンダムという名の機体


 ミシェルはハッサンに促され、再び地上の工廠跡へと出た。
 そこは跡地なために、内部はがらんどうの状態である。
 また、そこにあったと思われる機材はすべて取り外されたうえ
 運び出されており、薄暗いその奥には、昨日のトレーラーが
 停められているだけであった…。
 そして…その荷台には薄汚れた巨大なシートで覆い隠された、
 あのモビルスーツ、「ダンタリオン」が静かに横たわっている。

 …ふと前方をみやると、そのトレーラーが停まったすぐ
 そばに、もと何かの制御室のような場所があった。
 ところで先の通り、内部はすべてその機材の類は取り外されて
 いる。
 そしてその隅には…なにやらコックピットのシートらしき
 ものと、それに接続されていたと思われる、幾らかの精密機器
 がぽつんと置かれていた。

  「…なんだ、これは…?」

 簡素な作りのそのシートらしきものをミシェルは凝視した。
 人が座るちょうど背中のあたりだろうか、そこに何やら細い
 突起物が幾つも伸びている。
 それはまるで花びらが散った植物の茎ようなものだったが…
 同時にそこからかすかだが血液の匂いがした。
 よくみるとそこには、凝固したと思われるそれがこびりついて
 いた。

  「…それはの、最初にあの機体のコックピットに搭載されて
  いたものじゃ」
  「…!?」

 ひょっとしてこれは…あのモビルスーツを運用するための、
 例の生体システムというやつか…?

  「人と機体を相互に接続する…いうなれば、
  『マンマシンインターフェイス』の先駆けのようなもの
  じゃ」

 ウワサでは聞いていたが…これが…。
 ミシェルは食い入るようにそれをみつめた。

  「どうやらお前さんも…それが何かわかる様じゃな?」

 その問いにしばらくしてからミシェルは答えた。

  「…ああ。あの『ガンダムフレーム』という構造を持つ
  モビルスーツは…このシステムでしか制御できないと聞いて
  いる。勿論、実物をみるのは初めてだが…」

 そして…彼はそっとシートの端に手を触れた。

更新日:2020-07-05 07:08:34

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鉄血のオルフェンズ創作/「赤牙」(「せきが」)