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 やがて三人は軽い朝食を摂ると、そのままテーブルを囲んだ。
 ハッサンは煙草に火をつけ、それを吸い込み一気に煙を吐き
 出した。
 そして…そのあと信じられないほどに、彼の表情は一変した。
 そこにあるのは…高齢でありながらも、研ぎ澄まされた目を持つ
 老兵というべき姿であった。

  「さてと…ミシェル。お前さんはこれからどうする気じゃ?」
  「どうするって…大佐のメッセージを聞く限り、いまは
  あんたたちを頼るしか無さそうだ」

 ミシェルは素直な思いを口にする。
 …だが内心、どこか申し訳ない思いではあったが…。
 そんな彼に対し、ハッサンが頷く。

  「…そうか。大方何かあったらこの儂を頼れなどということ
  だったんじゃろう?…だったら、これから儂たちに手を
  貸してはくれんか?」

 ミシェルはハッサンをみやった。
 昨晩の大佐からのメッセージのことが思い出される。
 もっとも…今回は彼らに助けられたのだから、その恩はある。

  「実は儂たちは、あのモビルスーツ・ダンタリオンを
  乗りこなせるパイロットを探しておったんじゃよ」
  「何のために…?」

 いまのミシェルには、その訳は分からない。

  「この子の親父さん…そして儂の戦友、ジェスタを救うため
  じゃ」

 ハッサンの視線はケイトスに向けられた。
 大佐を助ける?
 行方不明…いや、すでに殺されているかもしれない彼を…。
 しかし…。
 ミシェルには直感的に、どうもそれだけが理由ではなく、何か
 また別の理由があるのではないか?…そう思えた。

  「助けるために、あんな曰くつきのモビルスーツが
  必要だとは…随分と大げさじゃないか…?」

 ミシェルのその言葉に、わずかにケイトスらの表情が
 硬くなる。

  「さすがはモビルスーツのパイロットじゃな。まさに
  その通りじゃ。実は、ほかにも理由はある…」

 ハッサンが観念する様にフッと笑みを浮かべる。

  「それはなんだ?」
  「ある意味、あなたと同じ目的ね」

 ケイトスはその理由を話し始めた。

 …実は、彼らにはある共通点があった。
 それは、あの謎のモビルスーツ、「赤牙」の存在である。
 そもそも赤牙とは、軍が研究開発を進めている、ある
 モビルスーツの名称だった。
 その機体は「グレイズ」を改良したものであり、まだ正式に
 実戦に配備されたものではなく、まだ試作の段階であった。
 また、正確には「モビルレギンレイズ」と呼ばれる機体で、
 そこに、人と機体を相互接続させるという、
 かの生体システムの機構をもつ。
 そして…。
 機体のその片方の腕には、巨大な「牙」のようなものが装備
 されており、それがその機体のメインの武器ということ、
 そして…機体のメインカラーが深い赤であることから、
 「赤牙」と呼ばれるようになったと言われていた。
 ジェスタは軍の最高機密であるその情報を知ってしまった
 ことで、同じ軍の情報部に狙われることとなったのだ。
 もっともジェスタは、軍の内部でそれを知ったといわれて
 いるが…。

  「…やはりそういうことか」
  「えっ?」

 ミシェルには、彼女らに互いの共通点があることを見出した。
 そして…。

  「俺も大佐には恩がある。だからその件については
  引き受けるよ。けど…俺にはまた別のある目的がある」

 ケイトスらは怪訝そうな顔つきでミシェルをみやった。

  「まさかあなた…」

 まだ以前のギルドのこと…いや、その与えられた任務について
 こだわっているのだろうか…?
 実はケイトスは、ある程度ミシェルの素性を調査していたの
 だ。

  「以前、俺には同僚でグースという男がいた。彼は…
  俺にとっては、かけがえのない相棒だったンだ」
  「お前さん…以前は、どんな仕事をしておった?」

 …その事情については、昨晩既にケイトスから聞かされては
 いたが…ハッサンはあえてその質問をミシェルに投げかけた。
 ミシェルは昨晩までの出来事を、すべてハッサンに
 打ち明けた。

  「…なるほどのゥ。友の仇を討ちたい…というわけか。
  まぁあやつの詳しい情報は、幾らか儂たちも得ていての」
  「…!?それ、本当か!?」

 ミシェルが思わず腰を浮かす。
 ハッサンは深く頷き、ふと席を立った。

  「ついてこい。…いいものをみせてやる」

 ハッサンはミシェルにそう言い、ケイトスも彼らに続いた…。

更新日:2020-06-22 08:46:52

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鉄血のオルフェンズ創作/「赤牙」(「せきが」)