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小説

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死霊の盆踊り2

大きな屋敷の門前を怪しげな群衆が埋め尽くしていた。
表札の付いた立派な門のインターフォンを押すと同時にドンドンと扉を叩く。
ちょっとの間をおいてインターフォンごしに男の声が聞こえてきた。
「はい…何ですか?」

「あの…」と答えようとした俺を遮って、ずいっと前に出てきた藤崎氏がマイクに向かって大声で喚きたてる。
「ちょっと、お宅の会社が大変なことになってるわよ!?みんなで心配して駆けつけたの!説明するから出て来てちょうだい!」
ポカンとした顔の俺を見て藤崎氏が笑って言う。
「馬鹿正直に言っても出て来ないわよ、まずは開けさせなきゃ」
平然とデマカセを言ってのける度胸…さすがだ。

しばらくして門が開き、中から中年の男が出て来た。
門前に集まった俺達の風体を見て、その異様さにギョッとしている。
「な、何だお前等!?」
そう言うと慌てて門を閉めようとしたが、門の扉を寺山氏がガッと足を挟んで閉めるのを許さない。
「おい、離せ!何なんだお前達は!?」
狼狽した様子で怯えたように中年の男が尋ねる。
寺山氏はそのピエロの顔をニタリと歪ませ、薄気味悪い笑顔を作って言った。
「怪しいモンじゃね〜よ」
どこまでも説得力が無い。怪しいよ、アンタは。

「ちょっとお邪魔するわよ」
取り次ぎに出た中年男性を強引に脇に押しよけた藤崎氏は門を大きく開くと、仲間のオカマ達引き連れてずかずかと玄関の方に入り込んで行く。
図々しいったらない…いや、頼りになる…すんません、やっぱり図々しいです!
しかし今はその行動力に頼るしかない。

そして玄関前の方に入った藤崎氏は手太鼓をボーンボーンと叩きながら、「みんな〜、中に入って葵ちゃんを探してちょうだい!」と呼びかけた。
何が何やらという表情で、ほとんどの人が事情を飲み込めないまま、群衆がぞろぞろと門の中に流れ込んでいく。

こうして俺達の忠臣蔵めいた討ち入りが始まった。
青山邸にいた人達はただただ邸宅の敷地内に入ってきた異様な集団を見て唖然としている。
そりゃそうだろう。
何せ社会の面倒臭い連中が勢ぞろいで集まってきているんだもの。

と言っても、ほとんどは葵の顔も知らない連中だ。
訳のわからないままに集められ、訳のわからないままにここに来ているにすぎない。
仇討ちでも無ければ、もちろん忠臣も無い。
荒木氏の連れてきた宗教の人達は庭先で集まって御詠歌を歌い始めた。
共産党の集団は…「ちょっと、これどういう事?」という顔をしている。
あげくには青山邸の人に「トイレ貸してもらっていい?」などと尋ねている。
李さんの連れてきた人達は「何かこれは変だぞ!?」と気付いたのか慌てた顔をしてどこかに携帯でハングルで連絡している。
仕方無い、統制などとりようも無い。

ほどなくこの集団は空中分解するだろう。
時間はあまり残されていない。
場が混乱している今だけがチャンスだ。
青山邸からこちらをうかがっている人達の中に青山氏や葵の姿は見当たらない。
「中に入って探しましょう!」と俺は藤崎氏に言い、青山邸の中に土足のまま入り込んだ。











更新日:2020-12-18 21:14:21