• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 35 / 45 ページ

死霊の盆踊り1

えらい事になってしまった。
日が沈み始め、だんだんと辺りも薄暗くなってきていたのだけど、広場にはどこから持ち込んで来たのやらイベント用のイスや野外用の照明なんかが置かれていた。
間違いなく藤崎ミコ氏とその取り巻きによるものだろう。

藤崎氏が近付いてきて言う。
「場所はもう調べてあるわ。青山内装、会社の裏に大きな一軒家があって、そこが社長の青山一範の家よ。そんなに遠くない、ここから歩いて15分ぐらいね」
「そこまで調べてくれたんですね…助かります」
「タチの悪そうなのも出入りしているみたいで、近所の評判は良くないようよ」
「そうですか…」

タチが悪い奴…多分あいつの事だろう。
俺をボコボコにした背の高いオールバックの男。
「…」
すぐさま葵にメールを送る。

《件名 至急返信求む》
《俺を信じてすぐに返事が欲しい》
《お前は今、青山さんの家にいるのか?》

最終確認だ。行って空振りでは話にならない。
メールの返事を待っている間イスに腰を下ろすと、隣のイスに誰かが座ってきた。
ピエロ姿の寺山氏だった。
「…寺山さん」
考えてみれば、この人も参加してくれるんだよな。
何の得にもならないし、無関係だっていうのに。
…でも何でこの人、最近いつもピエロの格好をしているんだろう?
見かけるといつもピエロ姿のような気がする。

「兄ちゃん、こんな話があるんだ」
「ん、何ですか?」
突然ピエロは口を開き、手を組んで神妙な面持ちで話し始めた。

「俺はこの前競馬で大負けしてな、他にも子供に馬鹿にされたり、いつも覗いている色っぽい姉ちゃんがその日に限って部屋のカーテンを閉めていたり、とにかくツキの無い日だったんだ」
「はあ」
「俺は運命を呪ったよ。でもな、500円玉が落ちているのを見つけたんだ。その時俺は思ったよ、ああ、神様はまだ見捨てちゃあいねえやってな。でもそれで近くの自動販売機で酒でも買おうとしたらな、出てこなかったんだ!何と自販機の下にはがれた紙が落ちていて、故障中って書いてあったんだ!おかげで酒も飲めなかった。…まあ、そういうことさ」

話を言い切ると寺山氏は口元にフッと微笑をたたえたまま押し黙った。
「…」
「…」
…ん?どういう事?何、今の話。何が言いたかったんだ?
シチュエーション的に何かいい話か励ます言葉でも来るのかと思ったけど…
おい、マジかよ、ただの与太話じゃね〜か!
よくこんな大事な場面を台無しにできるよなあ。
…聞いて損したよ。

「アンタ、何でいつもピエロの格好をしてるんだよ?」
「気付いたのさ、これが俺の本当の姿なんだってな」
そう答える寺山氏の口端からは涎が垂れている。
「…そうか」
そういや最近この人仕事に行っている様子が無い。
え、仕事と関係なくいつもピエロの格好をしている訳か?
完全におかしい。もう狂人と言っても差し支えない。
どうやら物語の進行とは全く関係ない所でこの男は完全に狂ってしまっていたようだ。
話の流れとはいえ、とんでもない奴を仲間に加えてしまった。

ピロリン
葵からのメールの返信が届く。

《はい、そうですけど…》
《どうかしたんですか?》

決まりだ。
俺は立ち上がると広場の入り口近くに行き、みんなからよく見えるようにイスの上に立ち上がった。











更新日:2020-11-13 21:03:55