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小説

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暗転パレエド3

ヨロヨロとよろけながら部屋の外に出る。
蹴られたお腹と体の節々が痛え…あの野郎、ムチャクチャしやがって。
もう201号室には誰もいなかった。
鍵がかかっているし、表札も無くなっている。
もたもたしている間にとっくに車で行ってしまったらしい。

201号室の水端親子はこのアパートからいなくなってしまった。
これで、名実ともに水端葵と俺は何の関係も無くなってしまった訳だ。
もはや隣人ですらない。
だから、忘れることさえできれば何の問題も存在しない。
部屋に戻ってぐっすりと寝る選択肢だってあり得るんだ。

それなのに…
きっと俺は馬鹿でお人好しなんだろう。
この結末にはどうしても納得できなかった。
アパートの階段をふらつきながら下っていく。
階段を降りきって、ぐったりしている所で藤崎ミコ氏に呼び止められた。

「あんた、どうしたの?お腹なんか押さえて…下痢?」
「藤崎さん、葵が連れて行かれた」
藤崎氏が怪訝な顔をする。
「どういう事よ?」

…。

「嫌な話ねえ、ムカムカするわ」
一部始終を聞いた藤崎氏は嫌悪感をあらわにしながら俺に同調してくれた。
「で、アンタはどうする気なのよ?形の上では再婚相手の所に行ったんでしょ?警察は相手にもしてくれないわよ?」
「だろうね、俺も頼りになんてしてないし」
「そもそもどこに行ったのかもわからないんでしょ?」
「一応当てならある。確か葵が言っていた。青山内装っていう会社の社長なんだって。あと葵のスマホの番号なら知ってるから、メールで確認はできると思う」
「あの子、スマホ持ってたんだ」
「型落ち格安スマホで、しかも2ギガ契約らしいけどな」

電話をするのは危険な気がする。
下手をしたら、あいつらに取り上げられる可能性もある。
う〜む、LINEでも交換しておくべきだっただろうか…?

「で、行ったとして、どうする気?話し合えるような人達じゃないんでしょ?正直どうにもならないわよ」
「連れさらう。葵を性処理道具呼ばわりする連中の所には置いておけない」
「はあ?アンタ自分が何言ってるかわかってるの?それ犯罪よ」
何を馬鹿な事を…という顔をして藤崎氏が顔をしかめる。

「ああ、犯罪だね。でも犯罪じゃなくちゃ、あいつを助けられない」
「どうしてそこまでするの?アンタ、あの子の事が好きなの?」
「自分のためだよ…これは自分のためにするんだ」
「は?」

何言ってるのコイツ?と言ったような目で藤崎氏は俺を見る。
「だってさ!」俺は叫んだ。
俺の中の想いが溢れてこぼれだしそうだった。











更新日:2020-08-10 10:32:33