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小説

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変人戦線異状なし

昼過ぎ頃に俺の部屋のドアを叩く音が聞こえた。
この叩き方の感じからして、相手は201号室の水端葵ではない。
インターフォン?そんなものは無い。
それらしきものはついているが、どこの部屋も壊れていて鳴らない。

ドアを開けると、そこには203号室の寺山氏がたたずんでいた。
「おう、兄ちゃん」と言って笑ってはいたが、どことなくいつもより元気が無いように見えた。
いつものいやらしさは影を潜め、所在無く、しょげている様子だった。
手には包み紙で包装された手荷物をかかえている。
「ああ、どうかしたんですか?」
と俺が尋ねると、
「兄ちゃん、実はな…」と言って話し始めた。

…聞けば寺山氏はあの後も水端葵に金儲けと偽って、いかがわしいグラビアデビューの話をしつこくしたらしく、ついに葵を怒らせてしまって今は口も聞いてもらえないのだという。
「アンタ…まだあの話を諦めてなかったのか…」
「そんで謝ろうと思って部屋に行ってもでてくれなくてよ…」

完全なる自業自得だと思う。慰める気にもならない。
部屋にしつこく尋ねる?一般的にはストーカーって言わないか?それ。

寺山氏の俺への用件は、謝罪用のプレゼントを渡したいから、氏の代わりに渡してほしいのだと言う。
「頼むよ…兄ちゃん好かれてるだろ」
そんな事を引き受けるいわれはないが、まあそのくらいの事ならば目くじらを立てることも無いだろう。渡せば終わりだ。

「仕方ね〜な〜、その代わり、もうその変な計画は諦めろよな?」
と言うと、「…ああ」と言葉少なに答え、「すまねえな」と言い、そのまま寺山氏は203号室に戻っていった。

俺は紙袋の手荷物を持ったまま一旦部屋の中に入った。
さて、紙袋である。
紙袋はとても軽かった。一体何が入っているのか…?
そのまますぐに渡しに行こうと思ったが…何故か嫌な予感がした。
いつもの寺山氏のいやらしさを煮詰めたようなニタリニタリとした笑みがどうしても頭の中から離れない。

ためらわれるし信義にもとる行為だとは思ったが、渡す前に中を改める事にした。
やはり、あのピエロは信用ならない。

ガサガサ

「…は!?!?!?」
中から出てきた物を見て俺は我が目を疑った。
出てきたのは女性用のパンティだった。
ピンク色のフリフリやおしゃれな紐なんかがついた、布面積のやたらと小さいセクシーなパンティ。

頭がクラクラしてきた。
どこの誰が仲直りしたい女子中学生にこんなものを贈ろうと思い付くのか?
奴の頭には脳ミソではなく豆腐でも詰まっているんじゃないか?

これは…危険物だ。
俺はこんなものを女子中学生に渡そうとしていたのか?
背筋がゾッとする。
しかもそれだけでは済まなかった。
(…ん?)
何やらメッセージカードのようなものが入っているではないか。
小さいメモ紙のような他愛の無いもの。
しかし、今の俺にはそれが禍々しいオーラを放っているように思える。
あふれだす嫌な予感を覚えながら、そのカードを手にとって中を読んだ。

「ぐおおおおお…!」思わず声を上げてしまった。
ブッと鼻血を噴きそうになった。
背中から床に倒れこみ、そのまま頭で海老反りにブリッジしてしまった。

驚くなかれ!なんと中には…

『葵に一生のお願いがある。これをはいた姿を見せて欲しい。よろしく頼む』
『沢村凉一より』

と書いてあるではないか!











更新日:2020-07-11 15:24:01