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和気あいあい その6

p6 玄関には倉持と大きな表札があり、玄関に入ると八畳はあろうかと思う広い玄関フロアには、アップライトピアノが置かれていた。「奥様が弾かれていたのですか」?『家内が昔ピアノを子供に教えてた事もあってね』。『夜には毎日弾いていたんだよ』。『ここなら、気兼ねなく弾けるからね』。「素敵なご夫婦ですね」《尊敬してしまいますよ》。『じゃあ、中にどうぞ』「失礼します」。《では、遠慮なく》そこは、10畳はあろうかと思われる広々した応接間になっていた。『ダイニングキッチンは、玄関左手にあるから、見ますか?』「ハイ」「ガスなんですね」『ボンベは、買取りなので、無くなったら、ボンベごと取り替えてもらう方式なんだ』『遠いから検針は電気のみかな』『ソーラパネルで発電して、一般家庭五軒分の電力売電してるんだよ』。『この裏の見えない所にソーラパネル設置してあるんですよ』「こんな山奥に凄いんですね」「すみません」「私お茶用意します」。
『そこにありますので、青いやつが、私のです』。「ハイ」「此ですね」。「あなた、お菓子持ってきて」《あっ、うっかりしてた》《ハイ》「これ東京では、有名なラトミのどら焼き何てすけど、奥様がお好きだったとお伺いしたものですから、日持ちも良いですから」、『ありがとう』『早速家内に』
『やはりラトミのどら焼き美味しいですな』。《あっ、申し遅れましたが、私の勤務先です》と、魁聖は名刺を差し出した。そこには、株式会社三澤ファーマホールディングス 課長代行、鷺ノ宮魁聖とあった。『三澤に勤めてるのかい』。『それに課長に迄なってるお人が』、『全てを投げ打って』、『此処で一週間じっくり考えて』、『結論出した方が、お互いの為にもなるかと思うんだが』、《ハイ承知しております》「妻としても、主人と価値観の共有をと、何時も考えてますので」『今日は疲れただろうから』、『私が手料理振る舞おうか』?
「ありがとうございます」。「申し訳ありません」。倉持はテキパキ手料理を作り二人をもてなした。『これは猪肉だから、食べてごらん』「わぁ」「美味しいねぇ」「あなた」《うん初めて食べたが》、《美味しいな》。「此って」「野生の猪捕らえるんですか」?『狩猟免許取って』、『罠を仕掛けるんだ』。『一週間も居れば大概の事は』、『理解出来るから』、『生き物を自分で解体処理しないと自給自足無理だし』、『ヤギの乳搾りもやらなければ、いけないし』、『角も切らないといけないから』、『結構やらなければいけない仕事は沢山あるからね』。こうして、夜は更けていった。

更新日:2020-05-20 13:31:43

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