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無能提督の銀河遠征 七月分

 勇章 上木戒斗、旅の中で自らの価値を生み出してゆく……

「政敵を招いて何を企む、上木よ」

「君に頼みたい事が在る」

「まさか自分の息子を千尋の谷に突き落とすつもりか?」

「違う、戒斗にセガールの艦長に任命してくれ!」

「又貴様のコネか……男なら裸一貫で伸し上げるのが普通だろう……何処迄甘やかせば学習するんだ!」

「そうじゃないんだ、吉宗公。君だからこそセガールの持つオーバーランチャーがどれ程対ギルディーバ兵器として価値が在るかわかる筈だ!」

「其れと此れとは無関係だ。こうして政敵と秘密裏にカクテルを飲む事自体も政治生命を失いかねない愚行だ。今度はコネに協力? 何処迄貴様はあの無能を甘やかせば気が済むんだ!
 己の飴に鞭打たれて野垂れ死ぬんだ!」

「心配はない。自分の身は守る手段を既に講じて在る。其処で君と密約を交わすのだからな……実は私自身、或る男と悪魔的な約束を交わされたんだ」

「悪魔的な? だが、わしとは何の関係もない。此処で貴様を絞め殺す事も褌にこっそり入れた青酸カリで貴様の顔面をアンパンマンにして死なせる事だって可能なんだぞ」

「青酸カリをそんな汚い所に入れないでくれ。恥ずかしい死亡経過に成って地獄で如何釈明して良いかわからなくなるじゃないか。其れとアンパンマンに謝罪しないと成らんぞ!」

「……まあ、其の悪魔的な契約を交わしたのなら気に成るな。其の話を聞かずに此処で貴様を絞殺すると逆にわしの政治生命が絶たれてしまう。受け入れよう、摩れば其の話を聞けるのでは?」

「其れだけじゃあ足りない。君に要求するのは他にも在る……最初の先遣部隊を、『ヒスイ』にしてくれないか?」

「何だと、あの無能が司令官なあんな奴を……討伐に当たらせる密約を交わさせるか!」

「他には……だ、如何だい? 良い話だろう、私の地位剥奪の見返りには十分過ぎる対価ではないか?」

「何を考える、上木戒一!」

「其れは私に契約を強制したあの悪魔に尋ねる事だ……徳川吉宗」

 英雄上木戒一は敢えてピエロを演じる……

更新日:2022-04-23 18:43:40

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訳在って掌編続けられない短編シリーズVOL1