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小説

携帯でもPCでも書ける!

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声が聞きたくて

 携帯電話が震える。
狩魔冥は仕事の手を止めて視線を移すと、そこには日本にいる恋人の名が表示されていた。
少しためらった後、電話を取る。

「何の用かしら」
「キミの声が聞きたくなっただけなのだが」
「そう、用は済んだわね。じゃあ切るわよ」
「待った、そう慌てないでくれ」

 早々に切ろうとしたのを止められる。

「以前キミが扱った事件について教えてほしくてな」
「始めからそう言えばいいのよ」

 彼が今抱えている案件と共通するところがあるらしい裁判の詳細を尋ねられ、答えたり意見を出し合う。


「非常に参考になった」

 彼女にとっても考えを改めて整理することができたし、弟弟子と久しぶりに意見を戦わせるのは悪くない時間だった。

「用が済んだなら切るわよ」
「ああ、実は用はとっくに済んでいたのだがな」
「……どういうことかしら?」
「キミの声が聞きたいだけというのが本当だったのだ」

 冥の眉が不機嫌にゆがむ。

「じゃあ、意見が訊きたいというのはウソだったわけ?」
「もちろんそれも用件のひとつではあったが、それ以上にメイの声を聞くことが出来るという方が私にとって大事だったのだ」
「少し会わないうちに、ずいぶんと寂しがりになったのじゃなくて」
「声を聴いたら、ますます会いたくなってしまった。
キミの顔が見たい、肌に触れたい、温もりを感じたい。どうしてもキミが欲しくなってしまう」

 ストレートに求められて冥の体温が上昇する。
それを悟られないよう、なんでもないように答える。

「じゃあ会いに来ればいいじゃない」
「私もしばらく手が離せなくてな」
「それならビデオ通話ぐらい覚えなさい」
「む」

 糸鋸がセッティングしてビデオ会議をしたこともある。しかし今、日本は夜中だ。

「そうだな、せめて顔ぐらい見たい。毎回刑事の手を借りていては愛も囁けないしな」
「……いいからさっさと寝なさい」
「ああ、お休み」

 電話を置いてふう、と息をつく。
イスにもたれて視線を移すと、棚のガラス戸に自分が映っていた。

「……ビデオ通話でなくてよかった……」

 そこには真っ赤に染まった自分の顔があった。

更新日:2020-09-26 13:59:23

【二次創作・逆裁】ミツメイ短編集