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健全

「いいか、おまえら。風紀委員たるもの俺達は、清楚、清潔、セイセストでなければならない」
「委員長、意味がわかりません」
「シャラップ新人。まったく、これだから最近の若い者は」
 新学期になって、初の委員会にはしゃぐ委員長の挨拶は奇抜だった。副委員長を務める私は、横から彼を「1年生とも2つしか歳違わないでしょう」となじる。
「そんなわけで、今日は風紀的なOKな学生カップルのいちゃつき方について検討していく」
「ちょっと待ってください。今日は自己紹介と、前期の活動を説明することになってますよね」
「それでは、さっそく意見のある者は挙手。ハイ!」
「誰も手を挙げないからって、自分で挙げないでくださいよ」
「ハグは破廉恥だ。しかし、手を離して額をくっつければ問題ないだろう。このように!」
 そう言って、彼は私に向き直り、肩を取ると私とおでこをくっつけた。
「委員長、これはキチンと破廉恥なのではないでしょうか」
「情事でも構わないだろう。だって俺達の愛は、学校を卒業しても続くんだからな」
「い、委員長……」
 私たちはしばし、えも言えぬ沈黙に包まれるなかで見つめ合い、首を息を呑んで着席する他の委員達へとグルンと向けてユニゾンで叫んだ。
「イエス、フォーリンラブ!」

更新日:2020-02-06 07:50:08

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