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その9

その9
麻衣


私は久美と道也の交際を認めた

まあ、久美の喜びようったらなかったわ

”麻衣~、ありがとう~”って、まあ、保護者だったわ、やっぱ私…(苦笑)

でね…、スクラッププール決戦では、久美が南玉連合サイドのセンターで何かと役回りをこなす中、一方の道也はギャラリーステージの”招かれざるクソ野郎ども”の監視役を私の要請通りこなしてくれて…

まあ、後日私が久美に種明かしをしたら、二人はなんか共同作業を達成したような高揚感に浸ってたよ

フフ‥、それでますますラブラブになって…

なんか、私なんかが見ても意外にお似合いなカップルに見えてね

ところが…


...


プルルルーン…、プルルルーン…

「…ああ、麻衣。ちょうど立ち上がったところだから、私が出るよ」

午前8時半ちょうど、朝食を終えた母が電話に出てくれるようだ

「まあ、優輔さん?…おはようございます。先日は大変お世話になって…。ええ、写真、とってもよく撮れてて…。…本当にもう、温泉まで入れて夢心地でしたよ。ありがとうねえ…」

ハハハ…、どうやら優輔みたいだ

「じゃあ、麻衣に代わりますよ。今、朝ごはん済ませたとこなんで…。麻衣ー!優輔さんから電話だよ」

「はーい!」

さあ、朝から何の用だろ

...


「ああ、ダーリン、グンモーニング~。どうしたの?朝から…」

「…麻衣、今朝のニュース、テレビで見たか?」

えっ…?

「うん、今見てた。都県境の川で死体が上がったってニュースをちょうどさ。…ん?それって、まさか…」

「あのな…、まだはっきりしねえんだが、そのホトケ、西城の可能性が強い…」

「…」

アツシ…!

...


そうだったのよ

あれから間もなくして、組を売った西城アツシは相和会が消す予定だったんだけど、”他”に先を越され、殺されたってね

まあ、私からしたら自業自得ってことで、消化できちゃうんだけど、やっぱり久美はね…

いくらテメーをレイプしても結局好きになった男だから…

で…、案の定だったわよ


...


いやあ、参ったな…

さっきからヒールズの店内には、久美のすすり泣く声だけが響いてるし

集まった全員が黙っちゃって、文字通りお通夜だ

アツシのああいう哀れな最期を知った久美がショックを受けるのは想像してたし、無理もない

しかし、この悲しみ様は予想を超えていた

死んだ人間を今さら罵りたくはないが、アイツはどうしようもないクソ野郎だった

久美を強姦しておきながら、訴えられることを恐れて後日、偶然を装って再会すると、単純な久美にうまく言い寄って心まで奪いやがった

私はコイツがアツシと付き合ってることを優輔から知らされたが、正直、何かの間違いだと思ったよ

でも、それは本当のことだった

あのカスの彼女になってからの久美は明らかにガラが悪くなり、仲間にもそれモンの彼氏を自慢するありさまだったし、レッドドッグスのメンバーからは反感を買っていたよ

私は頭の弱い久美がかわいかった

このままだとアツシの色にどんどん染まっていくことを危惧して、二人を別れさせる決心をした

優輔の方は、アツシがいずれ組員として道に外れた行為に及ぶと見抜いていて、時期が来たら制裁を与える考えだったんで、それに私も相乗りした訳…

久美を汚したクソ野郎は絶対に許さない!

...


そして先月、私らのプランは、ヤツが久美を犯した他ならぬあの廃倉庫で指を奪うことを以って成就させた

そのアツシと別れた後の久美は、まるで別人のように変わったよ

野郎にそそのかされて脱退した南玉連合には復帰が叶い、これまた意外だったが元ポマード男と恋仲になって、久美はギンギンに輝いていた

真樹子さん共々、ホッと胸を撫で下ろしていたところだったんだ

だから久美、あんなろくでもないアホ男なんかさっさと忘れちまえ!

結局、私の決論はそこしかない




更新日:2020-01-15 00:31:57

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