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その4

その4
麻衣



道也は現在、いわゆる便利屋さんの仕事をしているんだって

主としてお年寄りの世帯向けに、買い物や掃除、家の補修、電気・水道なんかのさまざまな不都合を直したり、応急処置を施したりとかのサービス業ってことだ

なにしろ、コイツ、手先が器用で何でもできちゃうってんで、真樹子さんが重宝してたもんな


...



「…真樹子さんを離れてから、しばらく墨東会には残ってたんだけど、結局は雑用係りに行き着いて…。墨東は硬派集団だし、どうしても、腕っ節の強いもんがもてはやされるんで、居づらくなっちゃっいましてね…」

それで愚連隊系列に戻った道也は、しばらく砂ちゃんの元で従来の”役目”を授かっていたのだが、その際立った器用ぶりが星流会経由で東龍会の目に留まり、”出向”になったようだ

「いやあ…、それが本物のその筋の人たちでしたからね…。最初は便利な奴だって、オレのマルチぶりをすごく喜んでくれましたよ。心付けもきっぷ良く弾んでくれて、大事にされてましたし。ですけど、次第にヤバい系の仕事にも連れ出さるようになって…。完全に”犯罪現場”ですよ。で…、いつの間にか、もう断れない状況に嵌ってました…」

私は、黙って道也の告白を聞いていた


...



道也の口から出た”犯罪現場”では、殺人ギリギリの場面にも遭遇したとのことだ

コイツ自身、こういう状況に至っては、このままでは引き返すことのできないところまで、行き着くのではと感じ取っていたらしい

「…東龍会では、正式な組員ではないオレ達みたいな連中、積極的に”スカウト”してて…。その中には、あの大打もいましたよ。ヤツは積極的に東龍会に取り入っていたんで、砂垣さんと星流会の関係とダブりましたけど、すぐに”違う”って悟りました…」

なんと、道也の口から大打の名が出てきたわ

私は、道也の言う”違う”の意味が直感的に理解できた




更新日:2020-01-14 20:21:44

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