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その6

その6
夏美



「それって、紅子さんの指名とか?」

「うん。お前行けって、その一言よ。ものの10秒で決まったわ。ハハハ…」

その時、ミキさんは「はい」と即答したと…

いやあ、度胸あるなあ…、この人

「ただ、私は竹刀使うこと、条件でって言ったけどね。もう紅子さん、向こうには有無も言わせずだったわ、竹刀の件。でも、向こうの相手出るまで10分近くかかってさ。ここでも紅子さん、イライラして怒鳴りまくってたし…。まあ、その間、竹刀の手配もあったけどね(笑)」

ようやく決まった相手は、背はミキさんより高く、いかにも力のありそうな、がっちりした体格だった

が、ミキさんは一見して、腕の長さでは若干、自分の方が勝ってると判断できたんだって

「ミキさん、その時、勝つ自信あったんですか?プレッシャーとか大丈夫だったんですか?だって、負けたら、砂垣さんの下に入るってことなんだし」

「自信はあったわ」

ミキさん、キッパリだった

「でも、相手は男だし、屈強な体躯だったんでしょ?」

「フフッ、実はこの展開、こっちはある程度は想定済だったのよ」

「え?じゃあ、ミキさんはタイマン張るの、最初から…?」

「ええ。紅子さんが怒り捲るってのも、シナリオ通りでね。まあ、ホントに怒ってたけどね、あの人(笑)」


...



紅組は、砂垣さんが紅子さんとのサシは絶対、避けてくると読んでたそうだ

その際、フェンシングで紅子さんに勝ったミキさんに竹刀を待たせて、それを条件にする流れも、しっかり組み立ててたらしい

しかも、具体的な戦い方も全員で作戦を練って、決めたと

つまり、お互い作戦の読み合いでも、紅組の方が深かった訳だ

うーん、さすがだなあ…

その辺は南玉なんかとは比べ物にならない


...



「みんなで決めた戦い方は、竹刀を持っても、フェンシング式で戦うこと。剣道じゃなくて。あくまで、出だしの序盤だけだけど。普通、双方が竹刀持てば誰だって、剣道スタイルか、棒切れ振り回す、チャンバラみたいなケンカスタイルのどっちかでしょ。まあ、相手の意表をつくのと、ペース掴むのを主眼に置いた訳」

「…」

「そこで、戦いが始まったら、剣道で言えば突きで先制を打ってね、いきなりね。相手ののど元重点で。ペース掴んだら、今度は竹刀で全身ぼこぼこよ。それで、相手倒して、一気にトドメね」

うわあ、えげつないなあ…

「とにかく、男の腕力にはかなわないから、やっぱりね。殴る蹴るは絶対避けなければならない。それで、この戦法で私が戦うのがベストだろうって」

どうやら、この時はそのシュミレーション通り機先を制して相手の体を倒したあと、うつ伏せにして腕の逆関節を決めちゃって、”参った”をとったらしい

完全決着、ギブアップってことか…

その間、約3分弱とか…

「逆関節って…。ミキさん、そんな柔道技みたいなのまでマスターしてたんですか?」

「特訓したのよ。紅子さんもそうだけど、柔道とかレスリング得意なメンバーとか、南米の柔術に通じた知り合いのなんかもフル動員してね。まあ、所詮、一夜漬けみたいなもんだし、実戦用のワンバージョンだけよ、会得したのは」

紅組って、あらためて戦闘集団だったんだと、思い知らされた…





更新日:2020-01-08 19:37:40

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