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プロローグ

 友達にと観光に行った帰りの車に乗る前、スミコが真剣な顔をして聞いてきた。
「これさそれぞれの家まで車で送ってもらいたいでしょ」
「それはその方がいいけど、スミコさんが運転するわけじゃないじゃん。シノさんが送ってくれるかどうかだよね」
「事前に今日の駐車場代とかで、1500円位は用意しといてって言ったでしょ」
「うん」
「でも全然使わなかったでしょ」
「うん」
「車に乗る前に2人から1000円ずつシノさんに渡したら、シノさんは送ってくれるよ」
「え」
「今日は運転してくれてありがとう!って渡せば良い」
「?」
「トータルの交通費考えたら全然悪くないでしょ」
「うん」
 本当に家まで送ってもらえなかったときちょっと負担が多い気がするが、こうゆう時は経験上スミコさんの言うことを聞いたほうが良い。
 さっきシノさんと2人になったとき駅まで送るていで話をされたからシノさんは家まで送るつもりは多分ない。

 トイレから戻ってきたシノさんが私達の方をみて言った。
「行こうか」
「うん。あ!今、お金渡しても良い?」
 今何かを思い出したかのようにスミコが言った。
「ん?うん。良いよ」
 あれ何かもらわなきゃいけないお金あったっけ?と言いたげな返事。

「今日、運転してくれてありがとう」
 そう言って1000円を渡すスミコ。
 私も慌てて、シノさんにお金を渡した。

「え、あーありがとう」
 あからさまに嬉しそうにシノさんはお金を受け取った。

 3人で車に乗ってシートベルトを締めたあとスミコが言った。
「ナベの終電ギリギリなんだってね。もしナベを家まで送っていくなら、私付き合うよ。送った後の帰り××××まで一緒だし」
「それならナベの事家まで送ろうかな」
 シノさんがあっさり承諾してくれた。

 何気ないこういうところで思う。スミコは人間の皮を被った魔女だと。


更新日:2020-01-05 17:25:38

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