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その4

その4
ケイコ



始まったぞ…

前傾姿勢の二人は小刻みな歩幅で、前後左右にじりっじりっとゆっくり移動を繰り返している

両者とも目線は相手を凝視しながら、間合いを測ってる

まるで首から下が違う生き物みたいに動いてる感じだ

とても静かな動きだけど、凄い緊迫感だよ

開始早々だというのに、私の額からは汗を吹き出ているわ

ズボンの後ろのポケットからハンドタオルを取り出し、おでこのあたりに当ててるが、両者からは目を離せない

予想通り、どちらも速攻には出ず、相手の出方を覗っているよ

さあ、どっちが先に攻撃に入るんだろうか…


...



そう頭をよぎった次の瞬間、バグジーが祥子の正面に向かっていた

わー、右手を全開にしてるぞ

それを、祥子の顔面あたりめがけて…

あのデカい手で掴む気だ!

「うぉー!」

”ブーン!”

右手は祥子の左側から襲っていった

「それー!」

祥子はそれを右に素早く逸れて交わし、バグジーの右手を取って一本背負いの形で豪快に投げ飛ばした

相手は100キロ近いんだよ!

何て力だ、祥子のやつ…


...


もう、南玉サイドは割れんばかりの歓声で耳が裂かれそうなくらいだ

祥子は間髪入れず、尻もちをついたバグジーに右から蹴りを持っていった

あっ…!

その蹴りを左手で受けたと同時に、バグジーが前に出たぞ

わー、何だ、ありゃ…


...



”ブーン”

いつの間にか中腰状態のバグジーは蛙のように両足で跳躍し、2Mほど距離のあった祥子へ飛びかかって行った

しかも掌をひろげて右手を祥子の腹部めがけ、正面から突き刺すように…

危ない!

ぐさっという音がしたような気がした

気が付くと、祥子の腹部にバグジーの右手が食い込んでいたよ

私は祥子を見下ろす位置まで近づいた

私の眼下には、顔面をこわばらせ、苦痛にゆがむ祥子の顔が飛び込んできたよ…




更新日:2019-11-08 17:54:29

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