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その2

その2
ケイコ



私は、多美のカウントアウトによる勝ちを宣言した

「いいぞー!多美ー!よくやった」

「本田さん、最高ー!」

南玉サイドからは割れんばかりの歓声があがってる

一方、砂垣さんの側からも、三島優子さんに対する健闘をたたえる声が連呼されてる

戦い終わって、相手側への口撃は皆無だったよ


...



三島さんはまだ立ち上がれず、仲間の介助を受けている

勝った多美も、立っているとはいえ両ひざに両手がくっつき、半腰で大きく息をついてるよ

なんか、すごい戦いだったなあ…

どうやら私は、最後のカウントの最中で意識が”2重層”に及んでいたのかもしれない

サブジャッジの二人がカウントをダウンする声は、はっきりと聞こえていたんだけど…

ほんの数秒の間、どっかへ飛んでった自分も確かにあったような気がするんだ

「横田さん…、両者の接触はこの後の決着後にさせた方がいいだろう。本田さんには、それで承知してもらったから…。まあ、砂垣サイドへは一言投げるそうだが、静観しててくれ」

「はい…、わかりました」

白石さんの耳打ちに、私はそう答えた

ここで多美に視線を投げると、多美は首を小さく縦に振って会釈してる

三島さんの方は…

ああ、砂垣さんも寄り添ってるわ

負けたとはいえ、あそこまで頑張った三島さんを、みんなは温かく迎え入れてるって感じかな…


...


少しすると、多美が私の前を通過したところで立ち止まり、砂垣さんらに向かって声をかけるようだ

「砂垣さん…、私からは、この後の決着がはっきりしてから、改めて申し上げますから…」

「…わかった」

多美はそれだけ告げて砂垣さんから了解を得ると、自陣営に戻った

「おけい、この後も頼むな」

私の前ではちょっと立ち止まり、そう一言あったが…

私は「うん」と首を縦に振って応えるにとどめた


...



さあ…、次はいよいよ両軍の雌雄を決する対決だ

急に南玉サイドがざわついてきたよ

多美が戻り、ウォーミングアップをしている祥子と一言二言交わしてるわ

祥子の周りには、南玉のメンバー以外にも、各グループの主だった人たちが集まっているし…

岩本真樹子さんをはじめ、矢吹さん、迫田さん、片桐さん、それと湘南の波沢さん…

ああ、それに相川先輩と南部さんも…


...



とにかく今の私は中立な立場なんだから、感傷にふけってはいけないな

で…、今度は砂垣サイドに目をやった

バグジーさんは、戦い終えた三島さんに何やら話しかけているようだ

あの人、砂垣さんの”バック”からお金で雇れた、いわば刺客ってことだっただけど…

なんか、砂垣さんたちのメンバーとは信頼関係が出来てるように見える

まるで固いきずなで結ばれた”仲間”のようだ…




更新日:2019-11-08 17:53:20

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