- 9 / 29 ページ
天使様
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのようになりたいな。
ねぇ天使様。僕にも翼をくださいな。
森の奥の泉には、時折天使様が水浴びにやってくる。真っ白な翼に真っ白い肌、それから真っ黒い髪に真っ黒い瞳。男の子でも女の子でもない体はお人形みたいでとても綺麗。
僕は天使様が大好きだ。だから、天使様がやってくることは他の誰にも教えてやらなかった。僕だけの天使様。他のやつらには会わせてやらない。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのものになりたいな。
ねぇ天使様。僕をさらってくださいな。
天使様は色々なことを教えてくれる。僕の嫌いなあいつがこっそり何をしているか教えてくれた。僕を怒鳴るお父さんが何を考えているか教えてくれた。僕の好きだったあの子が何を思っているか教えてくれた。
みんな嫌いだ。汚い。醜い。気持ち悪い。
僕は天使様が大好きだ。とっても綺麗で、清らかで、賢くて。僕も天使だったらいいのに、なんて思う。あんな風になれたのなら、きっと素敵だ。天使様は何よりも素晴らしいんだもの。
自分だって嫌いだ。汚い。醜い。気持ち悪い。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのようになりたいな。
ねぇ天使様。僕を削ってくださいな。
天使様は僕もいつか天使になれると言ってくれた。そのうち僕を連れて行ってくれると言った。早く。早くそうなればいいのに。僕が大人になる前に。
夜になれば悪魔がささやく。あいつみたいに、お父さんみたいに、あの子みたいになればいい。そうすれば立派な人間になれると。生きるのが楽しくなると。
悪魔は天使様と同じように真っ白い肌と真っ黒い瞳を持っている。そして翼は真っ黒で、髪は真っ白。やっぱり女の子でも男の子でもない。不思議と悪魔も清らかに見える。みんなより、僕より、ずっとずっと綺麗だ。
だから僕は悪魔も好きだ。けれど、仲良くなると天使様に会えなくなるかもしれないから、耳は貸さない。それでも毎晩会いに来てくれるから嬉しい。
天使様はたまにしか来ない。ずっと会えないと、もう来ないんじゃないかと心配になる。そんな僕に悪魔は優しく話しかけてくれる。そろそろ諦めようかと思った頃に、天使様は現れる。そうすると悪魔の事は一旦忘れてしまう。
そうだよ。
天使様も悪魔も、僕に会ってくれるんだよ。
僕はまだ大人にならないよ。
僕はいつか天使になるんだよ。
僕も綺麗で清らかになるんだよ。
あいつもお父さんもあの子も嫌い。人間なんて汚いから嫌い。人間なんて醜いから嫌い。人間なんて気持ち悪いから嫌い。
僕だってすぐ天使様みたいになれるよ。そのために削ってもらったんだよ。僕も天使様と、それから悪魔とも同じ体なんだよ。
本当だよ。
泉にいるのは天使様。とっても綺麗。とっても清らか。とっても賢い。
毎晩会いに来るのは悪魔。とっても綺麗。とっても清らか。とっても優しい。
天使様も悪魔も、僕によくしてくれる。ひどいことも怖いことも気持ち悪いことも何もしないよ。しなかったよ。するわけないんだよ。
本当だよ。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのものになりたいな。
ねぇ天使様。僕を愛してくださいな。
ところで、もしかして、天使様と悪魔は仲良しだったりするのかな?そうだったら嬉しいのにな。
でも、僕の勘違いでしょ、ねぇ天使様。祝福のキスはどこにするものだったかな?
ねぇ天使様。あなたのようになりたいな。
ねぇ天使様。僕にも翼をくださいな。
森の奥の泉には、時折天使様が水浴びにやってくる。真っ白な翼に真っ白い肌、それから真っ黒い髪に真っ黒い瞳。男の子でも女の子でもない体はお人形みたいでとても綺麗。
僕は天使様が大好きだ。だから、天使様がやってくることは他の誰にも教えてやらなかった。僕だけの天使様。他のやつらには会わせてやらない。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのものになりたいな。
ねぇ天使様。僕をさらってくださいな。
天使様は色々なことを教えてくれる。僕の嫌いなあいつがこっそり何をしているか教えてくれた。僕を怒鳴るお父さんが何を考えているか教えてくれた。僕の好きだったあの子が何を思っているか教えてくれた。
みんな嫌いだ。汚い。醜い。気持ち悪い。
僕は天使様が大好きだ。とっても綺麗で、清らかで、賢くて。僕も天使だったらいいのに、なんて思う。あんな風になれたのなら、きっと素敵だ。天使様は何よりも素晴らしいんだもの。
自分だって嫌いだ。汚い。醜い。気持ち悪い。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのようになりたいな。
ねぇ天使様。僕を削ってくださいな。
天使様は僕もいつか天使になれると言ってくれた。そのうち僕を連れて行ってくれると言った。早く。早くそうなればいいのに。僕が大人になる前に。
夜になれば悪魔がささやく。あいつみたいに、お父さんみたいに、あの子みたいになればいい。そうすれば立派な人間になれると。生きるのが楽しくなると。
悪魔は天使様と同じように真っ白い肌と真っ黒い瞳を持っている。そして翼は真っ黒で、髪は真っ白。やっぱり女の子でも男の子でもない。不思議と悪魔も清らかに見える。みんなより、僕より、ずっとずっと綺麗だ。
だから僕は悪魔も好きだ。けれど、仲良くなると天使様に会えなくなるかもしれないから、耳は貸さない。それでも毎晩会いに来てくれるから嬉しい。
天使様はたまにしか来ない。ずっと会えないと、もう来ないんじゃないかと心配になる。そんな僕に悪魔は優しく話しかけてくれる。そろそろ諦めようかと思った頃に、天使様は現れる。そうすると悪魔の事は一旦忘れてしまう。
そうだよ。
天使様も悪魔も、僕に会ってくれるんだよ。
僕はまだ大人にならないよ。
僕はいつか天使になるんだよ。
僕も綺麗で清らかになるんだよ。
あいつもお父さんもあの子も嫌い。人間なんて汚いから嫌い。人間なんて醜いから嫌い。人間なんて気持ち悪いから嫌い。
僕だってすぐ天使様みたいになれるよ。そのために削ってもらったんだよ。僕も天使様と、それから悪魔とも同じ体なんだよ。
本当だよ。
泉にいるのは天使様。とっても綺麗。とっても清らか。とっても賢い。
毎晩会いに来るのは悪魔。とっても綺麗。とっても清らか。とっても優しい。
天使様も悪魔も、僕によくしてくれる。ひどいことも怖いことも気持ち悪いことも何もしないよ。しなかったよ。するわけないんだよ。
本当だよ。
ねぇ天使様。僕のお願い聞いてよ。
ねぇ天使様。あなたのものになりたいな。
ねぇ天使様。僕を愛してくださいな。
ところで、もしかして、天使様と悪魔は仲良しだったりするのかな?そうだったら嬉しいのにな。
でも、僕の勘違いでしょ、ねぇ天使様。祝福のキスはどこにするものだったかな?
更新日:2019-11-15 12:16:13