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白と黒の部屋で

 窓に手をついて外を眺める。
 傘が並ぶ。色とりどり。

 透明。
 赤。
 黒。
 青。
 黄色。

「ねえ」
「なんだい」
「私は何色?」
「白いね」
「あなたは何色?」
「黒かな」

 あなたの持ってきたコーヒーを一口すする。苦い。でもそれが好き。雨のせいか部屋は寒くて、温かいコーヒーが身にしみるよう。

「ねえ」
「なんだい」
「私コーヒー好きよ。あなたと似てる。黒いしね」
「そう。なら僕もホットミルクを飲めばよかったかな」
「そうね・・・いえ、ダメよ。私ホットミルクとは似てない」
「じゃあなんだろう」
「・・・さあ」

 窓の外を眺める。
 傘が並ぶ。色とりどり。

「いつ止むかしら」
「もうすぐじゃないかな」
「いつ外に出られる?」
「さあね」

 白。
 黒。
 白。
 黒。
 白。
 黒。

「苦いわ」
「じゃあお砂糖もっと入れなよ。ミルクも要る?」
「ちょうだい」

 溶け込む白。
 溶かしこむ黒。
 混ざり合って?

「ごちそうさま」
「うん」

 窓の外を眺める。
 傘が並ぶ。色とりどり。

 透明。
 透明。
 黒。
 透明。
 黒。

 ああ。

「もうおやすみよ」
「まだ眠くないわ」
「いいから。起きた頃には雨も止むさ」
「べつに止んでほしいわけじゃない・・・」
「止まないと寒いよ。さ、おやすみ」

 白。
 黒。
 黒。
 黒。
 黒・・・。

 コーヒーの味。
 溶け込むミルク?
 いえ、もっと違うもの・・・なんだっていいわ。

 白。
 黒。
 白。
 黒。
 白。
 黒。
 交ざり合って?


 黒い夜を通り過ぎ、白い朝が来る。

更新日:2019-10-26 21:25:03

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