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奇策あり②

奇策あり②



「今日はさ、さすがに来てくれないかもって思ってたわよ。だから、嬉しいよ」

「フン!よっぽどトンズラしようかと思ったが、あの報酬額をちらつかされたんじゃあなあ…。重い足もインセインって訳だったわ」

「重いのは足じゃあなくて、その不摂生の脂肪でしょうよ」

「大きなお世話だ!さあ…、用件のみで、ちゃっちゃといってくれよ。お前と長時間、面と向かってると、精神状態が乱れてくるんでな」

「そうね。こっちもここにきて、だらだらする時間は持ち合わせていないし。…じゃあ、まずはこれをお渡しよ」

そういって、私はバッグから持参品を取り出し、カレの目の前に置いた

それは定型サイズの封筒だった


***


「中身確認して。他の二人のと間違えてないかね」

「おい!お前、これって…」

「あなた方が、痛~い思いして剥がされた生爪よ。ねえ、そん時ってさ、麻酔とか使った訳?」

「ウルセー!今さらこんなもん返されたって、こっちの指先にはくっつかねえって。どういうつもりだ、お前!」

脂肪付のプー、今日は最初から顔面汗ダラダラで、興奮全開だ


***


「こんなもん、私が持ってても意味ないんだし、持ち主に戻すのが妥当でしょ。必要ないってんなら、ごみ箱にでも捨てちゃいなさいよ!」

「ううっ…」

「石渡さん…、あなた、よほど悔しかったんでしょうね。アンタたち3人、私の恋人・康友にさ、一か所に集められて、その場で爪剥ぎの刑ってことでしょ?石の字3人、ガタガタ唇振るわせて、同じ石の字の”神”、元殺し屋にベロリやられた」

「ううっ…、お前、何が言いたいんだ!!」

アハハハ…、顔真っ赤だって

石渡プーさん、あなたを最初に呼んで正解だったわ


***


「…あなた達4人、まあ、みんな苗字が石の字なのよね。偶然だかどうだかは知らないけど、笑えるわ。そのフォー・ストーンズさん、あのイカレたサイトの雇われ俳優さんでしょ?ギャラの中身は知らないけどさ、私の愛しい康友は同じ役者のアンタら3人を拷問まがいに爪べろで、他の3人は金のために、親に授かった体の一部をいわば捨て去った。なんなんだろか、コレってね」

「貴様~!、どこまで俺をバカにする気なんだ…」

「バカになんかしてないって。でもバカね、あなた…。憐れんでるだけよ、惨めな人達ねって。ヒモのお姉さんたちが不憫だわ」

「ううっ…」

脂肪付め…、唇をかみしめて、目を血走らせてるわよ


***


この人、屈辱感ではち切れんばかりって表情だ

まあ、再会の挨拶代わりとなる挑発はこの辺でいいわ

さっそく本題に移すわよ

耳の穴、かっぽじってよく聞けー




更新日:2019-10-09 16:09:32

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