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相互殺意④

相互殺意④



「この中身…、私たちどちらかが殺された時に流れ出る血に見えるわね」

「ふふ…、ますますもって、今日の二人にはピッタリな飲み物って訳か」

そういうことよ、康友さん…


***


「じゃあ、グラスの中は相手をナイフで切り裂いた生血ということでね。…相互殺意を確認しあって乾杯しましょう」

私はそう言いながら、ワイングラスを右手ですっとすくい上げた

だが、カレは眼前のワイングラスを手にしようとしない…

そして…

「…ルイ、グラスをテーブルに一度戻せ」

その口調は明らかに命令調で、かなりダークっぽかった

でも私は、それに従ったわ

すると…


***


カレは立ち上がり、今まで座っていたそのチェアを持ち、私の正面から隣りに移動してきた

この人とこんなに近くは始めだ…

いきなりで突飛なカレのアクションに、私は戸惑った

カレは大胆だったわ

互いの体は微妙に触れ合ってて…

既に私の心臓はその鼓動を激しく刻んでいた



***


「どうしたの…?」

私は左隣に密着して掛けるカレに、ようやくおっとり刀で問いかけた

「…」

だが、カレはほぼ無表情でしばらく私を見つめていたが、10秒ほどして低いトーンで語りかけてきたわ

「ルイ…、オレたちが体を張って現出する物語は始まったんだ。設定どおりのオレたちの関係を観客に印象付けるため、本編冒頭のシーンに盛り込まないとな。危険な恋人関係ってことで、思いっきりな…」

「どういう意味なの、それって…」

「…」

ここでは思わず素の感情が乗っていた

でも共演者・康友は、それに対する容赦など持ち合わせていなかった…


***


カレはじっと私を見つめたまま、左手でゆっくり私の前のワイングラスを手にした

更に右手を私のひざ上に乗せると、短めの黒いスカートを大きくまくった

”何をする気なの!”

一瞬、若干の興奮を感じながらも、基本、恐怖心が私を支配した

”ジャーッ…”

何と康友は、スカートをまくられ露わとなっていた私の白いパンティーの上から、グラスの生赤い中身をこぼしたのだ

”冷たい…”

私…、まずはそれを感じた





更新日:2019-10-07 22:47:55

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