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その6

その6
剣崎



「ナイス、ショーッ…!」

うーん、土砂降りの中、接待の”芝刈り”はキツイ…


...



「…いやあ、あいにくの天気だったが、なかなか楽しかった。”会話”も弾んだしな…。相馬さんにも加わってもらいたかった。はは…」

「”楽しい会話”は会長にも、しっかり聞いてもらいますんで。お二人とも、本日は”有意義”なお時間、ありがとうございました。大雨ってこともありますが、今日は”忘れられない”と思います…」

「うむ…。矢島君、剣崎君、今日は君たち二人でよかった。では、我々は先に失礼する」

終わった…

ふう…

県警と本庁のお偉いさん二人をクラブハウスからお見送り完了で、まさに一息ついたわ


...


その後、矢島さんが今日宿泊するFホテルの部屋に寄った

「…しかし、改めて驚いた。例の”近い将来”の話、ホンマもんだろう、剣崎…」

「はい。本庁からも同じ話ですからね。もうタイムスケジュールに乗っかってるんでしょう」

「ふう…、”バラ色の人生とは、未来を見通せるものだけが享受できるもの”か…。なんともな。でも、想像もつかんわ、今日みたいに”墨”背負ったモンが、サウナも入れない、銀行口座も開設できない。ホテルで集会も開けん、不動産も買えないって…。この国は極道を本気で壊滅する気なのか…」

「ここで重要なのは。一概にやくざだ極道だと言っても、消し去るべき対象は広域暴○団だけってことです。全国組織に加盟してなければ、連中からしたら潰すべき暴○団でないということになりますから…」

ソファに深く腰かけた矢島さんは、両手を頭の後ろへ組みながら大きく頷いていた


...



「だから、終戦以降、東西両広域組織の傘下に組み込まれていない我ら相和会がだ、これからも広域暴○団に吸収されない…。これは彼らにとって、極めて重要な意味を持つんことなんでしょう」

「そのようだな。全国組織と堂々と渡り合ってる、日本でも稀有な相和会の存在ってことで、前々から県警は鼻が高かったらしいからな…(苦笑)。何しろ、あの人たちが”独立系の雄”って言ってんだからよう。ハハハ…」

「…でも、今日のメッセージは我々にとって、いずれも重大な意味が込められてましたね。あの方たちは、若が亡くなった後の相和会にどう進んでいってもらいたいのか…、今日はっきりしました…」

そうさ…

権力側は今日、会長が持病で他界した時、相和会の”今後”はどうあるべきかを示唆していた

後継は矢島さんで行けと…

建田さんではないぞと…

県警と権力側は、経済派ではなく武闘派を指名してきたんだ

このことは、矢島さんと俺に取って、極めて重大な意味合いを含むぜ


...


そのあと、矢島さんも俺も、”その辺”の意識から、”しかるべき際”を想定していた

それは互いの顔を見ればわかることだ

なんといってもこの春、会長自らが後継と公言していた若が死んだんだ

よって、これからは組内で後継争いが再燃する

二人は、自然と建田さんを念頭に置いた話題に移って行った


...



「剣崎…。オヤジ、また遠縁の娘を増やしたって、本当か?」

こういった話の流れの中で、さりげなく、”こんな視点”を持ち合わせていることが、矢島さんの切れ者たる由縁だ

麻衣はもとより、さらにもう一人の横田競子も、本家付きの俺が会長”直”で面倒を見ることになる

それはすなわち、若が亡き今後は、2代目を争うことになる建田さんが触れられない部分ってことだ

ションベン娘だからと、矢島さんはアタマから、”このこと”を軽視していない

当然、俺も”その時期”を迎えれば、あの娘達を”使える”と踏んでいる

ましてや、あの厄介な”白い粉”が絡んでいるんだからな…




更新日:2019-09-28 10:57:43

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