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その10

その10
ケイコ


「…失礼しまーす」

「ケイちゃん、忙しいところ悪いな。まあ、そこ座ってくれ」

私はベッドの横にあった椅子に腰を下ろした

さあ、今日はどんな話になるのだろうか…


...


「…今、いづみからは、私の留守中の件を詳しく聞いたよ。結論を先に言えば、いずみには南玉に残って幹部でやってもらうことになった。彼女の判断にもいろいろ問題はあるが、いちいち難癖つけても始まらないしな。いづみなりに、南玉のことを思ってのことだったようだし…」

そうか…、でもよかったよ

私なんかからすれば、総長補佐の矢吹さんや湯本さんに辞められちゃって、頼れる先輩には一人でも多く残ってもらわないと心細いよ、やっぱりさ

「でもよう…、木戸先輩は、そのままって訳にはいかないな。私が呼んでも来てくれないし…。いくら何でもだ…、執行部が揃っていない中で、その場のメンバーに敵陣主体のキャビネットをゴリ押しされたんではな…。組織に対して背信行為と受け取られても仕方ない。残念だが…」

「総長…」

荒子総長はまさに無念そうだった…

でも、この人の判断は妥当だと思う

恵川さんは、あくまで木戸さんの提案をメンバー全体に計ったんだろうからね

あの状況だったし、一つの選択肢ってことで


...


「いづみと多美には、南玉の2派分けを了承してもらったよ。詳細は私に一任ってことだ。そこで、この前大筋で話した通り、各校側勢力と走りの部隊を設けて、各校をケイちゃんに仕切ってもらいたい」

えー!

2派分けは聞いてたけど、いきなり新入りの1年がそれはマズイでしょ…

「あのう…、私は数日前に加入したばかりだし、1年ですよ。いくら何でも、そんな大役はとても務まりません。第一、先輩だけでなく、既存のメンバーも納得しないでしょうし」

私はすぐにそう突っ返したんだけど…

荒子さんはベッドの上で腕組みして笑みを浮かべてる…


...


「いづみは賛成してくれた。多美もな。ケイちゃんが適任だと言ってさ。他は、二人から了解を取り付けるってことだよ」

「あのう…、自分には自信がありません。無理です、私には」

「ケイちゃん、これからの都県境はよくも悪くも特別な女以外でもさ、どこかグループに加わったり、チーム作ってバイクに乗るようになるよ。ざっくり言って、これからの南玉もメンバーが増えるだろう。当然、都内側でもキャビネットの元、大量に頭数が集まるよ。その多くは、一般の子になるんじゃないかな。そういったメンバーには、荒くれ者や豪傑女ではない、人格的に優れた者にリードしてもらわないと。そうなれば、誰でもケイちゃんを推すって」

わあ…、参ったなあ…





更新日:2019-09-28 11:00:49

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