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グラーベは最後に優しい呪いを掛ける

 二人の運命を分かつ要因は常に双子座の宿命かも知れない。カストルは短命でボルックスは長命を約束される。だが、其れを認めたくないボルックスはカストルと運命を共にしたいと決意を深める。

『ウグググ……未だ、無理なのか。兄さん、如何すれば僕は正闘士<ジェミニス>みたいに<双子のパラドックス(ジェミニ)>を出せるんだ。こんだけ強く成ったのに……体への負担が、負担が!』

 そんな彼の下に一人の大男が何かを投げ込む。其れは完全密閉された瓶で開けるのには栓抜きのような物が無ければ開かない程。

『バルマリィ、如何して此処に?』

『使え、ボルーク。実験台第一号は貴様だ』

『投薬を使った強さなんて僕は認めません!』

『ブレンがやっているじゃないか。今更貴様が拒否する理由が在るのか?』

『バルマリィ、僕は貴方の命令を拒否した事は在りません。ですが、異議申し立てなら何度だって行っております。今回の命令が其れです!』

『オイオイ、命令拒否と異議申し立ての境目は何処なんだよ!』

『其れは何を使えば良いのか具体的に命令を下しておりません。其れが今回のが命令に値しない異議申し立てなのです!』

『屁理屈を使ったな、段々カーズトに似て来たなあ』

『兄さんにはずっと苦労をしてました。言い訳のレトリックが増えるのは自然の成り行きです。其れでバルマリィ、何を使えば良いのですか?』

 大男は右人差し指を転がる瓶を差す。其れが主な命令、其れが大男が望む物。其れを再確認した彼は手を出す。

『わかりました、バルマリィ。僕が此の投薬実験第一号に成ります!』

『頼むぞ。俺も試しに飲もうとしたんだが……』

 口に含んでいないのに噴き出す彼。其れから必死の形相で其の危険性を大男に伝えるのです。

『駄目でしょう、バルマリィ。貴方は世界を我が物にする権利を持っているのです。其れを見ず知らずの薬で身を滅ぼしては本末転倒其の物に成ります!』

『俺は死なんな。今は未だ動きが鈍くとも此れから更なる強さを見せ付ける日が来る。たかが投薬如きで俺が滅ぶか!』

『其れでも僕はわかります、此れは危険過ぎる薬だって事は……話を戻します。其れでバルマリィ、飲んだのですか?』

『残念ながら俺が含もうとすると其れは幻を掴んだみたいに液体を出さない。其れ所か固体化してまるで舌で舐める事も出来はしないんだな』

『飲食物の一つでも在るのに、意思を持つのですか……農家の米みたいに!』

『農家の米は自分が食べられれば其れで構わん奴だ。だが、其の薬は別だ。まるで精霊の意志を持つみたいだ……伊達に<アンチサモナー>と名称を付けられた訳じゃないな。という訳で十二本全部俺を拒否した。勿論、アマニアだって……』

『アマニア……だと!』

 彼は其の名前を聞いて怒りを隠し切れずに震わせます。其れを見た大男は背を向けて部屋を立ち去って行きます。中途半端に話を打ち切って迄。

『バルマリィが去った……去ったのは良いけど、僕は!
 いや、僕はアマニア・オルトゥスに復讐したいんだ。兄さんを殺したあいつを、此の手で葬る為に!』

 其れから彼は投薬の便の分厚くも固い蓋を開いて中から湧き出る気体を鼻だけじゃなく口にも含んで--















































 --我を戻したボルーク・ジェミニオンは思った……「又、副作用が来たか。其れで暫く意識を持って行かれていたんだな。行かれた……としたって如何した!」

「おんやあ?」目覚めた彼を迎えるのは髪の毛が逆立って更に顔の火傷傷が目立つ女性が一人。「塵共を見逃した糞餓鬼が戻って来たんかあ」

「黙っていなさい、スコルピアス少佐。貴女が僕に説教出来る義理は在りません!」

「言ってろよ、てめえ。先鋒はてめえだと知ってむかっ腹が湧くんだ。あの連中に死を与えるのはアタシの役割だったのに!」

「未だ奴等が来るとは限らないよ。とはいえ、此の位で終わるようでは兄さんの仇に相応しくない。宣言した僕が馬鹿みたいだ!」

「信じてやがんのか、敵なのに!」

「僕は自らの手で敵を始末する事を誇りにします。例え失敗する事が在っても奴等を見逃す事はないのです」

「そうかいそうかい……」とヘレナさんはボルークさんの覚悟を見て踵を返して立ち去ります。

「僕は絶対にバルマリィの野望を実現させるよ。期待しててくれ!」

更新日:2020-01-06 20:20:01

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