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花山の握力は蟹を慄かせる!

 二星座目が潰えた報を耳にしたいけ好かない大男は……「ヘレナの奴は随分と燥ぎやがるな……ンン? ああ、あのヒステリーは死んだか……ンで?」

「理解しているの、バルマリィ。ボルークに続いてヒューマニーが倒れたのよ。プロジェクトフィアフルフレアが本格始動した事を喜んでいる場合ではないわ!」

「貴様も随分と悲観的な女だな、エレヴァーラ」

「悲観も何も仲間が死んで悲しむ気持ちが在って然るべきよ。大規模な隕石の嵐に依ってマーレイドを二千年前みたいに荒廃させる作戦を推進している内に私達は全滅するかも知れないわ。わかっているの?」

「俺が居れば全ては万事上手く行く。貴様等が何人死のうが如何でも良い」

「理解してはいたけど、やはり外道の心は永遠の孤独のようね!」

「フハハハハ、其れで……十三星座は十星座に減った。其れで何が問題だあ?」

「問題大ありよ。ヒューマニーは大規模な作戦に於いて重要な位置を占めるのよ。彼女無しで成功しなかった作戦が在ります? 幽霊船然りサクリファイスプロジェクト然り!」

「だが、もうあの喚き女が居なくても別に構わん。俺が居れば全てが上手く行く。何もかも、がなあ!」

「クウ……」此のおばさんは本当に胃に穴が開いてそうね--傲岸不遜で仲間を塵のように切り捨てる性格を理解しておきながらも何処かで良心と葛藤するんだかね。

 そんな二人の前に報告をしに来るのが一人……「バルマリィ、大変だ。メームルが又、暴走を始めたぞ!」ブレン皇子ね--元皇子とは呼ばないけど。

「そうかい、エレヴァーラ……貴様があやしてやれ!」

「クゥ……わかったわ」

 エレヴァーラさんが部屋を出ると……「エルフィンを滅ぼしたのはやり過ぎだ。彼女は故郷を失った事を知って益々平常心を失っている!」ブレン皇子は事の重大さを訴える。

「おやあ? 俺はてっきりあれは滅ぼす方が良かったと思ったからヒューマニーに頼んで消し炭にしたんだがな」

「何て事をしたんだ……何がしたいんだ、バルマリィ!」

「知らんな。如何せあの餓鬼は使い物に成らん。何処か適当な所で切り捨てるつもりだ……ドゥーユーアンダースタンド?」

「切り捨てるというのか、カーズトやボルーク、其れにヒューマニーや彼と同じように!」

「彼……ああ、其れで貴様は何を訴えたいんだ!」

「何を……」「あの餓鬼の件で報告しに来たとは思えんかったのでな。ンで何を訴えたいんだ?」何処か聡明な部分も垣間見えるバルマー。

「……前々から余は温めておいた計画が在る。紙の資料だが」ブレン皇子は其れをバルマーに手渡しする。「眼を通すだけで良いから感想を聞かせて貰いたい!」

「何々、『勇者』? 其れに名称を『理想郷(ユートピア)』……フンッ、下らんな!」でもあいつは其の提案を破り捨てる事で答えを示しちゃった。「こんな物が採用される試しがない……失せろ!」

「其れがお前の答えなのか。わかったさ」踵を返して部屋から出て行くブレン皇子。「為らば件が終わり次第、余も独自の行動を始める!」

 部屋で一人と成ったバルマー。髭を剃り始めながら独り言を呟く……「フッフッフ、但し『惑星バルマー』という名称は気に入っているがな」

更新日:2019-11-18 05:49:55

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