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その6

その6


「そうっすか…。バグジーは殺し、キッパリNGでしたか…。惜しいなあ…」

椎名は、同年代のバグジーを最大級に評価していた。
だが、それは決して彼のウデだけを買っていた訳ではなかった。

”確実に粛々とオーダーを完遂してもらえれば、もちろん、こっちはそれで文句ないんだが…。バグジーには他の仕事人にはない”アツサ”を感じる。雇う方も気分がいいんだ。もっとも、あののめり込み感で見境がつかなくなるヤツには、殺しはリスクが高いとも言えるか…。その自己リスクは、本人も自覚してるのかもしれない…”

「まあ、今後も連絡は取り合う分には構わないってことになったし、ヤツとは切れずにおこうや」

ノボルは意味ありげに、そのことだけを椎名に告げた。

”今は余分なことは言わんでおこう。何分、この先は流動的だしな。まさにいつどんな状況が訪れるやも知れんしな…”

しかし、この時のノボルには、バグジー起用のある想定があったことは事実だった。
そしてそれは、そう遠くない日に現実のものとなり、二人の運命を大きく変えることになるのだが…。

この時の彼には、バグジーとは針路を別った認識があった。

”ヤツとの繋がりをキープはできた。だが、それはオレにとって疵を伴う妥協だった…”

バグジーとの”合意”は、大打ノボルにさらなる屈折した自己意識を駆り立てる出来事となったのだ。


...


「…それで、坂内さんはその砂垣んとこの人間を、こっちにも出入りさせるるってんですね?」

「ああ…。”しかるべき時期”に至り、”あっち”で始動開始となった際を見据えて、オレ達のシビアなスタンスを界隈に浸透させるのが狙いらしい。こっちのNGなしを”そいつ”に埋め込んでおき、オレ達をあそこのしかるべき連中どもに”語ってもらう役”だな(薄笑)。だが、あくまでもリアルに受け止めさせるため、一時期ってことだが東龍会が預かった形にしてるそうだ」

「うーん、要するに、自分とこの砂垣と星流会の連携とはステージが違うってことの発信って訳か…。それ目的で、砂垣の身内に今から仕込んでおくと…」

椎名は腕組みをして盛んに唸っていた。

”椎名は坂内さんの意図を汲んだようだが、一応念を押しておくか…”

ノボルのこういった際の指示には、常に慎重な配慮を怠らなかった。





更新日:2019-09-14 13:57:26

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