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その5

その5


そんなバグジーの思いをつゆ知らぬHの推測は、バグジーの耳へとさらに届く。

「…だからさ、そこでアンタに白羽の矢が立ったんだと思うぜ。大打はよう、今後も連絡取り合うことを申し出たんだろう?お前さんが殺しはNGだと、シグナルとはいえ拒否したのに…。要はヤツら、ギャル対策には幅を持たせてるんだ。きっと、今後いろんな想定ありを前提にしてるんだろうよ。そこで、若い女にはとことん非情なアンタってことさ」

「フン…、それなら、最初の話に逆戻りだ。女子高生でも若い女でも、それらはよう、”女子供”でひと括りされてる。なら、NGなしのオオカミとかでクリアだろう。何もオレって必要性はなくなる。違うのか?」

バグジーはここで、Hに結論を導き出す問いかけをぶつけた。

...


「はは…、理屈ではそうなるよな、バグジー。先方の立場から考えたら、ピンポイントのヒットじゃあないんだから、ならば、ヒットマンは複数ストックしておきたい。これがますある。その場合、確かにアンタ以外のNGなしのヤツで構わない。でもね、それでもアンタでなけりゃあって出番をイメージしてる気がするぜ、大打はさ」

「どういうことだ?」

「うん…。もしオレの推測通りなら、相和会と東龍会、若しくは星流会間による代理戦争という構図になる。たとえ前面に出る一方が女子高校生であったとしても、あくまで絵柄はそうなるって。…であれば、いろんなシュチエーションが考えられるし、もしろ、単純にヒットで片付けることができないケースの方が、多く考えられるんじゃないのかな」

「いや、よくわからねえ。大打のシグナルは明らかに、殺しが出来る出来ないだった。それで、老若男女を問わず、はっきりNGだとこっちもシグナルで明言した。確かに今後も連絡は取り合おうということになったが、ヤツはもうオレを雇わないというニュアンスに受け取った。互いのポリシーを尊重するということでだ」

バグジーは数日前のノボルとのやり取りを、正確にHへ伝えた。

...


「ああ、分かってる。だが、その上でだって。いいか、ヒットは視野の範疇でも、それは想定の一部だって。…まずは敵対する局面をつくる必然が生じれば、猛る女どもと正面から戦う段階を踏む必要性も出てくるだろう。そこでは、遠慮なしで若い女どもを潰せるそれなりの力量を持った仕事人がどうしても不可欠って理屈さ」

「じゃあ、その初期段階の対女どもの対策要員ってことで、大打がオレを雇うっていうのか?」

「うん。どうしても殺す必要性が避けられない場合は、アンタは使わない。オオカミなり他の殺しOK連中にオーダーは回るだろう。半面、アンタら二人のポリシー尊重ってことなら、大打がアンタを雇い、猛る女達への防波堤に繰り出す手法はあり得るだろうよ」

”なるほど…。大打は常に中長期を捉え、日々の備えを怠らない野郎だったな。Hの今言った後段は可能性として否定できないか…”

この時、バグジーはその想定を決して忌避する気持ちにはならなかった。
自分でも不思議な感覚だった。

もっとも、その理由は明らかであったが…。




更新日:2019-09-14 13:40:09

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