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その3

その3


大打ノボルと会った数週間後、バグジーは”仕事仲間”の一人、Hと電話で情報交換の場を持った。

バグジーはH以外の仲間とも、滞在先が変わる都度連絡先を伝えており、その際には定期的な情報交換は欠かさなかった。
この日も単に、いつもの”世間話”という感覚ではあったのだが…。

...


「じゃあ、H…、大打は今、”NGなし”を盛んに物色してると…。秒殺オオカミはもう抱えてるのに…。東龍会と目されるパートナーのオーダーには、それだけでは不十分ってことなのか…」

「そんなとこだと思う。…他の連中から聞いた話も加味すれば、今回の”NG対象”はやけに若い女ってニュアンスが窺えるんだ。そうなりゃ何しろだ、若い女を平気で半殺しがウリで、握力100の化けもんなんだなんだからな、そっちは。そりゃあ、欲しいだろうよ。それで今回、アンタへのオファーだったんだろう(笑)」

「おい、ちょっと待ってくれ。女子供ではなくて、若い女か?”いつも”とはちょっと違うのか…」

「ふふ‥。こっちからしたら同じようなんもんでも、雇い側からすると微妙に違うんだろうな。…これは推測だが、大打ノボルは東龍会とのコンビで、極めて若い女のヒットを視野に入れてるのかも知れん。その対象も心当たりがあるしな」

「具体的に察しがつくのか、ヤツらの対象が…!…」

バグジーは受話器にせっつくようだった。


...


「いや、誰がってとこまでは分からんさ。ただ、”あの連中”じゃないかって思い当たるフシはある」

「よし、それ聞かせてくれ」

「ふふ…、まあ、慌てるな。…なあ、バグジー、チーム大打のホームグランドはどこだ?」

「横浜だろう」

「ああ、そうだな。だがその本拠地の他に、今現在、チーム大打のモブスターズがローテーションを組んで出ばってるとこあるよな?」

「うん、なんでも東京の”上”あたりとか…」

「そこな、凶暴なギャルが大挙集ってる地域ってことで有名らしい。特にここ数年では、女の集団やら走りのグループが雨後の竹の子状態ってこった。今年の夏には従来の勢力均衡が崩れ再編騒動が起きたらしいが、男連中を端に寄せて中心に居座ってたのは女子高生を中心にした小娘どもだったらしんだわ」

「…」

「…それもガキを飛び越え、やくざ組織も巻き込んじまったって噂もある。おそらくは、東龍会とつるんでいる大打グループとも利害関係を生じた可能性もあるんじゃねえかな。それでな…」

この時、バグジーはハンマーで叩きつけられるような衝撃を感じた。

そしてその瞬間、彼の脳裏には数か月前に、ここ千葉で目にした一人の背の高い若い女の姿を思い起こしたのだ。
それは、手にした木刀を振り回す嵯峨ミキだった。




更新日:2019-09-14 13:06:39

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