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その1

その1


”やはりか…。まさに、きっぱりだったな…。いいさ、それなら。だが、バグジーには今日、突っ込んでやる”

ノボルに返ってきたバグジーの回答は、まさに剣もホロロと言ったものだった。
もっとも彼は、そんな予感をずっと持ち続けていたせいか、内心はさもあらんと言ったところで、ショックというものはなかった。

一方で、そうであれば、バグジーには是非にでも確認せねばならないことが、彼にはあった…。

...


ここは、千葉県某所…。
新興住宅街の一角にどでんと構える、スポーツジム内のロビー…。
長椅子に並んで腰を下ろしているノボルとバグジーの間には、若干の重苦しい空気が漂っていた。

「…わかった、バグジー。だが、オレも自分の進む道には妥協などない。できれば今後もアンタを雇いたいが、そっちのポリシーは尊重したいんでな」

「オレも正直、アンタと切れたくない。…しかしよう、アンタははっきり言葉にはしなかったが、こっちは最終地点までと理解したから、そういう回答になった。でさ…、”それ”までを請負っちまったら、もうヤクザそのものじゃねえかよ。いっそ、あっちに就職すればいいと思うがな」

「就職しちまってまで”それ”に手を染めてもよう、オレにとっちゃあ意味ないんでね」

「…」

二人はここでどちらともなく相手の方を向き、無言で視線を交わしていた…。

...


「…”あっち”にいかないで、連中のやれることは”オール”でやってやる…。その為に、オレは自分にNGを許さない。本業さんには、そんなオレにバリューを感じてもらうつもりでいたし、常にそれを意識していたわ。あくまでも、双方の立場を束縛しないドライな関係で、ウィンウィンのビジネス関係を目指してな。でよう、それによる協力関係を”先方”とはすでに持った…」

「オレには理解不能だな」

バグジーこと柴崎典男はやや突き放すような口ぶりでそう言い切った。

”フフ…、お言葉じゃんか。それならバグジー、こっちもお前に問わせてもらうぜ”




更新日:2020-05-22 15:54:30

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