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その4

その4
ケイコ



先手はテツヤの方だった

右にいた男にいきなり頭突き一発かましてから、正面のヤツの胸元を両手で思いっきり突き飛ばした

すかさず、後ろの男がテツヤの首に手を回して来たけど、これを見事な一本背負いだ

もう一人の蹴りが飛んで来れば、相手の足を見事にキャッチした

更にそいつの靴、すばやく脱がして放り投げたぞ

おいおい…、ちょっと、あれって…

昨日、私がテツヤと取っ組み合いした時に仕掛けたワザじゃん

アイツ…、早くもパクリかよ…


...



その後、テツヤはパンチ、キックと、4人相手に大立ち回りだ

スゲー!

ケンカ、めちゃくちゃ強いじゃん、テツヤのヤツ

でも…

1対4は序盤、テツヤの断然優勢だったんだが、ここでケバ女が手を出してきた!

「わー!これでもくらえー!」

真樹子とかって呼ばれてた女、さっきテツヤが投げ捨つけた靴で、後ろから後頭部を殴りやがった

不意を突かれて体制崩したテツヤに向かって、今度は4人が一斉だ…!

「このヤロー!おい、遠慮いらねえから徹底的にやってやれ!」

わあ…、4人が寄ってたかって殴る蹴るだわ

まずいや、これ…


...



「そんなんで終わりじゃだめよ!ウチらに逆らった”印”、しっかりつけてやんなきゃ」

女が腕組みしてそう怒鳴ると、男の一人がニヤニヤしながらズボンのポケットから何かを取り出してる

「ヘヘヘ…、そうだな。俺たちに反抗的な態度は、”やけどの元”だってこと、しっかとわからせてやるか」

え…?

マジかよ…、あれライターじゃん!

ひょっとして、根性焼きとかかよ…

...


「タバコ一本頼む。おい、そいつを押さえつけてろ」

「ふざけんな!離せよ、このヤロー!」

テツヤ、3人の男にがっちり押さえつけられちゃったよ…

「そいつ、陸上やってるからさ。ズボンめくって膝にでも当ててやんなよ」

あのクソ女、どこまで卑劣なんだ!

こうなりゃ、私も加勢するか…?

いや、どうせ無駄だわ、女ひとりじゃ…

ここで私はめいっぱい考えた

よし…!

ここは”元演劇部”でいくか…

テツヤ、もう少し頑張れ!


...



私はヤツらに気づかれなように、神社の石段をちょうど真ん中あたりまで降りてきたところで立ち止まった

そんで、境内に向き直るると、あらん限りの大声で叫んだ

「テツヤー、待ってろー!今、110番してきたから、警察もうすぐ来るぞー!」

おお、我ながらでっかい声がでたぞ

そしたら、ヤツらの耳にもはっきり届いたようで、石段の上から私を見下ろしてるよ

「あいつ…、テツヤの連れだ。まずいぜ!」

「テメー、余計なことしやがったな!」

女も男4人も慌てふためいて、こっちへ降りてくるわ

なら、こっちもかかるぞ!


...



私も神社下まで持ち前のダッシュで階段を下りて行った

そして今度は周辺にこれまたバカでかい声で叫んでやったわ

「わー、誰かー!暴走族がリンチしてるよー!誰かー!」

「おい、退散だ!早くしないとポリ、来るぞ」

追っかけてきた5人はもうパニクって、停めてあるバイクに急いでまたがったよ

「待てー、テメーら、逃げんじゃねーぞ!」

おお、テツヤも神社の階段を下りてきたわ

ブブブ、ブーン、ブーン…

テツヤが神社下に着いた時は、もうヤツらは走り去ってっいた

「チクショー、まだ終わってねえぞ!覚えてろー!」

それでもテツヤは、アイツらのバイクを追いかけながら叫んでる

さすが陸上部…

いやー、大したガッツだわ、コイツ





更新日:2019-09-12 12:30:40

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