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その5

その5


「…わかりました。相馬豹子とかって名乗ってる女子高生はしっかりチェックします」

「ああ、頼む。無論、こっちも我々のルートでな。…一応の目途は都県境の騒ぎが収まった後だ。そこで何かが見えるはずだ。お前がその先、その子、もしくはギャル集団と絡む局面のあるなしも。おおよそはこの夏が終わった時点だ。その頭でな、ノボル…」

「はい。では、そのつもりで…」

ノボルと坂内…、究極の”パートナー”関係を契った二人は、短期的視点とその置き所が一致していた…。

...


「そこで、今一つ、今日話すつもりだったことがある」

「はあ…、なんでしょうかね?」

「砂垣が”あっち”をパージで、”こっち”に引き上げてきた際、一人坊主を預かってな」

「はあ…」

ノボルはすっとんきょな声を出してしまった。
要は今までの流れと、これからの話の関連が掴みかねていたからだった。

だが結論として、”その話”はこれ以降の大打ノボルにとって、極めてコアな側面を持っていたのだ…。


...


「そいつな、手先が器用で重宝なんだ。それで、借り受けた」

「えー!東龍会がですか…。でも、砂垣とは諸星さんのおさえるやくざとの距離感とかがあると思いますが…」

「だから、あけっぴろげには言ってねえよ(苦笑)。最初はやんわり愚連隊を経由して、作業員名目で引っ張り込むつもりだ。とにかく何でもこなしちまうんだ、そのチビ。こっちはよう、いくらでも現場仕事があるからなあ」

「それ、なにか目的とかあるんですね、坂内さん…」

坂内は少し間をおいてから答えた。

...


「ある。…来たるべき時期には、大打ノボルがNGなしってことをそれ相応の人間たちに周知させる仕込みの一つと考えてればいい」

この時点、ノボルには坂内の語る意味が分かり兼ねていた。

「まあ、細かい説明はおいおいする。それで話はいったん飛ぶが、近日、オーダーを出したい。”トップメニュー”をな」

「殺しですか!」

「ああ、ここらでそろそろな。手駒はストックできてるんだろう?」

「ええ、今はNGなしとなると2人です。で…、どんな仕事内容なんですか」

「ターゲットは女だ。30代の若い女になる」

「…」

ノボルはやや戸惑った。
殺しまでを受けるパートナー関係は、自ら望んだことではあったが、内心、”ついに来たか…”と、自分に言い聞かせずにはいられなかったのだ。
そしてその瞬間、ピーンとした緊迫感が彼の全身を駆け巡っていた…。





更新日:2019-09-11 22:03:04

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