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その5

その5
麻衣



優輔さんのフリに、私は端的に答えた

そして、今度は剣崎さんに顔を向け、更に継ないだ

「…要するに、奴らからすれば、明確に位置づけられない極めてファジーな”本郷麻衣の立場”が突き付けられる訳です。地元女性勢力を代表してでもなく、かといって、やくざモンのバックをつけてでもない。しかし、相和会組員倉橋の妻になる立場は明確に示します。それでも、相和会”組内部”の本郷麻衣ではないという立場です。そのメッセージとして、17の小娘である麻衣は、あえて相和会の人間を連れず、”個人的相棒”一人を伴って、乗り込むんです」

「はは…、剣崎、じゃあよう、東龍会のヒモが付いたガキどもには、こっちの庭で今まで通りやらかしゃあ、麻衣が割り込むってことだな?」

静岡の叔父さんは、まるでやんちゃなガキ大将みたいにニヤリと笑って、剣崎さんに確認してる(苦笑)


...



「はい。それを受け、こっちが”望む”出方をしてくるまで、麻衣が追い込みをかけます」

「なるほど…。剣崎、ガキどもの矛先が”然るべき立場”の麻衣に達した時、出動って流れだな?」

剣崎さんは会長に向かってゆっくりと頷いてから、「はい」と小声で答えた

「ふふ…」

「ふふふ…」

「ふふふっ…」

ここで相和会首脳陣4人による、”ふふふ”が輪唱のように奏でられて、私の耳に吸い込まれていった


...



対大打の”麻衣オペレ-ション”上程は、その場で了解を得た

「…しかし、なんといってもよう、麻衣も所詮、小柄な未成年の娘だ。敵陣にその相棒一人では危険だろう。無論、遠巻きで鹿児島ミカの眼が光っているんだろうが…」

会長は私の身の安全を心配してくれた

よし、ここで”あの件”だな…


...



「あのう…、実は昨夜、ここに砂垣順二が来て、今後の申し合せをしたんです」

「…ああ、砂垣は諸星さんが長く抱えていた、まあ、ヒモ付きガキの先達です。去年、麻衣が都県境のガキ勢力をひっかき回した折、うまく使ったんですが、今般、星流会との間に一線を画したので、麻衣とは一定の協力関係に入ったんです」

私の口火を察してもらい、剣崎さんが程よく補足してくれた

私たち二人の阿吽の呼吸も、今や芸術の域かもね(笑)


...



私は砂ちゃんとの連携の基本方針を述べた後、バグジーを用心棒として貸し出す提案があったことを告げたわ

「…それで、用心棒代は折半ってことで話ししたんですが…」

「よし、それ、俺の方で経費として落とそう」

わー、金額言ったら、叔父さんが出してくれるって!





更新日:2019-09-10 16:56:51

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