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その10

その10
麻衣



「あのう、剣崎さん…。それ、客観的な一般論で言えば、私…、私こそ、建田さんから最も憎まれるべき人間になると思うんですけど…」

私は率直に言ったわよ

だって、モロそうだもん…

「ハハハ…、そりゃあ、杓子定規に考えればな。だがよう、お前は建田さんとはロクに面識もないし、あの人からすれば、仮に全部を正直に話したって、要は俺や矢島さんと共同でワナに嵌めたってことになる。変な話だが、現実に建田さんが俺達3人へ、刃を向けられるか?」

「…」

はあ…、そう言う視点か…

私がすぐに反応しなかったんで、剣崎さんはさらに続けたわ


...



「…もし俺たち3人がさ、仮にだ、頭を下げてあの人に謝罪したとして…、どうだ?あのよう、建田さんの立場的心情からは、”用が足りない”ってことになるんだよ。はっきり言うぞ…。彼からすれば、求めるものは、”誰かを、差し出してもらうぞ!”ということに行き着くんだ。まあ、ケジメの問題になる」

「そう言うことなんですね…。わかりました。では、そのケジメは誰に…」

ここで私の目線は、相関図に佇むアキラを捕えた

アキラは間宮康とともに、建田さんから見て、自分を売った張本人に当たる…

もちろん、その双方共、導いたのは私になる


...



「…麻衣…。俺たちはよう、アキラには、ヤツとケイコを守ると約束して、その上で協力させたんだ。…俺とお前には、アキラをそのケジメの対象から外させる義務がある。そうだろ?」

「剣崎さん…、そうでしたね。じゃあ、アキラはこれからおけいと幸せに生きていけるっていうことで、いいんですね?大丈夫ですね?」

私は、私自身の手で地獄の淵まで追いやった、あの二人の幸せな未来を希求している

デタラメだわ、私自身

骨の髄まで…

「ハハハ…、幸せなれるかどうかは、あの二人次第だろ。俺達がすべきは、あいつらに降りかかる危険を排除することだ。…まあ、そうなれば、ケジメの対象は残りわずかってことになる…」

なんか、犠牲になる人間の絞り込みって、陰鬱な気分になるわ

だけど、私が率先して関与したことだ

目を背ける訳にはいかない

「…ここでお前には言っておくが、実はな…、広島で預かってもらってる”荷物”が勝手に歩いてる…」

それって間宮か!




更新日:2019-09-10 16:08:44

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