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その2

その2
ケイコ



ロード・ローラーズのオーディションの為、大阪に向かったあの晩…

アキラは拉致されたんだ

椅子に縛り付けられて暴行を受け、朝まで監禁された

その間、クスリを打たれ、私を思う気持ちにつけ込んだ”奴ら”から、”犯罪者”になることを同意させられた

当然、オーディションには行けず、プロデビューの道を閉ざされた

しかも、アキラのギターは麻衣に破壊された

コンクリートに何度も叩きつけられ、粉々に…

あのギターは、アキラが一時とは言え好きだった”ギターの先生”と一緒に選んだ大切なものだったのに…

...


なんてひどいことをしたんだ!

なんでそんなひどい目に遭うんだよ、アキラが…!

その後、私たちは引き離されたまま、”あいつら”のシナリオに沿わされ、警察へ出頭した…

麻衣の野郎はクスリの発作にかこつけて、病院の個室で豪勢にリハビリだってのに…

私はまたもや、麻衣に対して殺意も厭わないほどの激しい怒りと憎しみで、体が溶解しそうだったよ


...


「…なにも家を出て、ここに来てくれた翌朝に言わなくていいことだろうが、もう君とは変に遠慮し合いたくないって気持ちに達してるから…。でも…、また麻衣のことなんか思い出させてしまって、すまない…」

アキラ…

「今度アキラが買うギターは、私がバイトで稼いだお金を持って、二人で選びたい。そうさせて。お願い!」

私は結構大きい声で、アキラの顔を見つめてそう言った

それは、いわば懇願と宣誓がごちゃまぜのようなものだった

「じゃあ、そういうことで頼むよ。いやあ、楽しみだなー」

アキラは歯切れよくそう答えてくれた

そして、私の大好きな清々しい笑顔を惜しみなく見せてくれたんだ

麻衣なんかに負けてたまるか!

あんな奴には、もう私たちを邪魔させないんだから!

私は麻衣への怒りと憎悪を、何とかそんな気持ちに切り替えた





更新日:2019-09-10 14:07:55

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