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その6

その6
ケイコ



「だけど、急にそんなマジな顔で、面食らっちゃうな。なんか、いつものテツヤらしくないっていうかさ…」

「あのな…、オレ、小さい頃から女の子に興味があってさあ。それこそ、小学校低学年からだよ。それからずっとだ。そういう気持ちと一緒だったんだ、オレ」

「…」

「単に興味があるとかって言ってもね…、子供ながらにも、それなりの性欲も伴っててさ。女の子からしたら、理解できないかもしれないけど…」

テツヤ…

おそらくこんなこと、他人にはやたらに話さないだろう…

なのに、私には告白してくれてる

私は黙って聞いていた

「でもオレ、性格がこうだから、あまり我慢しないでさ。あけっぴろげだったよ。で、いつも周りには女の子がいた。男同士で遊んでても、平気で女の子連れてたよ。小学校の時にはもう、女子と二人でどっか行くってのは、しょっちゅうだった」

「そうか…。でも、テツヤは明るいからな。そういうんなら、女の私でもあまり抵抗ないかな…」

「…だけど、おけいには言っとかなきゃって思うから話すけど…。そんな小さい頃から、キスとか、体触ったりとかもあったんだ。もちろん、無理矢理とかじゃなくね。それが、何人もの子とそういうことしてるのも、みんな承知でね。もう小学生の時点で、今と同じだったんだよ、オレ」

テツヤは真面目に話してくれてる

私もそんな彼の話を真面目に受け止めてる…


...



「テツヤ…」

「それでさ…、初体験ってやつなんだけど、小6ん時だよ。そういう行為に至っても、複数公認でずっとだ。すんなりポーンと、そういうコトできるようなっちやったんだ、ホント自然に。オレ、別に隠さなかったから、それ、周りはみんな知ってたし。友達は羨ましがってたたけどさ…、オレ的には、何ていうか…。ふう、ちょっと生々しかったかな。おけい、気分悪くしたか?」

「ううん。良く言ってくれたよ、テツヤ。だけど、あえて聞きたいんだ。一人だけ、特別に好きになるって、そういう気持ちにはならなかったの?今まで」

「うーん、本気で好きだった子はいる。でも、他の子も好きなんだ。これ、普通じゃ理解されないのは良く分かってる、オレも。そうなんだけど、それでもなんだ。だからオレ、普通じゃない、病気なんじゃないかって…」

テツヤは真顔だった

テツヤ…、お前がそんなに悩んでたなんて、知らなかった

それなのに、私、軽い気持ちで病気だとかって、口にしちゃってたよ…

「テツヤ、まず謝るよ、私。お前のそんな心の内、知りもしないでエロいとか病気だとか、無神経だったよ。ごめんな」

「はは、いいんだよ。お前にそう言われて、かえって楽になったんだ、不思議とね。何か、真剣にオレのこと、思ってくれてるって感じしてさ。お前と出会って、まあ、いろいろあって、接して。やっと、自分のことじっくり、逃げずに考えられるようになったかな…。それで、やっとお前一人をって気持ちになりかけてきてさ…」

「うん。私もお前とは正面でやりあって、その上で、好きになったんだよ。だから…、これから、焦らないでやっていける?私と…」

「ああ、そのつもりでいるよ。まあ、今言ったこと、自分としては、急には変えられないと思うんだ。正直ね。だけど、おけい一人を見続けていくって気持ち、大事にしてさ、そういうんで何か少しずつでもって…」

「ありがとう。私もテツヤのこと、しっかり見つめていく。その気持ち、大事にするから」

川のせせらぎを背にした私たち二人は、まさしく真正面を向き合っていた…





更新日:2019-09-05 23:24:14

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