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その4

その4
ケイコ



私、テツヤの言葉を聞いた瞬間はちょっと動揺したけど、すぐにシャキッとなった

どうせだ、ここで気持ちスッキリさせちゃおう

何故だか、そんな決断が咄嗟にできた

「…、二人?ああ、私とテツヤだけってこと…。あのさ、それってさ、お前としては、デートみたいなもんで考えてんの?」

「そうだな、そんなつもりだな。なんかさ…、だんだんお前のこと、好きになってきちゃったみたいなんだ、オレ」

テツヤは率直に、私への気持ちを告白してくれた

嬉しい…

なら、私も”正直”な気持ちをここで告げよう…

そう決意した


...



「…。テツヤ、私もお前のこと、だんだん好きになってきてる。だけどね、どうしてもお前の女好き、それはダメなんだ。病気みたいなもんって、お前が諦めてるんなら、そこで、私の気持ち止まっちゃうんだよ」

これは100%、私の今の思いだ

当然、テツヤを傷つけることも口にしてるという自覚はあった

でも、やっぱり最初に言わなくちゃ、きっぱりと

そして、いつものように、ほとんど間をおかず、テツヤは答えてくれた

「オレさ…、さっき矢吹先輩が言ったこと、なんか、出来そうかなって思えてきてるんだ。お前のこと好きになってきてるこの気持ちが大きくなれば、まあ、一挙には無理でも、今みたいな極端なのは抑えられるんじゃないかとかさ」

「じゃあ、私と付き合って、スケベを治そうって気はあるんだな?」

「ああ、あるよ。正直言ってさ、こういう気持ちって、初めてなんだ。信じてもらえないかもしれないけどさ…」

いや、信じるよ、テツヤのその言葉…


...




「テツヤ、私も性格なんで、他の女の子みたいにできなくて悪いんだけど…。二人で釣り行って、体とか求めてきても、絶対受け入れないぞ。キスとかでもだめ。お前のこと好きでも。嫌なんだよ、今のままで、そういうの。それでもいいんなら、川釣り行く。一緒に二人で。ゴメン、可愛くないよな、私さ…」

これも偽わざる、私の”正直”な気持ちだった

女のエゴもあるのは承知だし、こんなこと面と向かって言っちゃう自分、男の人からしたら、興ざめもんだよ

それもわかってるんだよ、テツヤ、その上でなんだ

「おけいのそういうところにも惹かれてるんだ、オレ。お前みたいなヤツ、今までいなかったもんな。大丈夫だ。釣り行っても、”この前”みたいに強引なことはしないよ。誓う」

「うん。テツヤ、ありがとう。私の言ったこと、逃げずに聞いてくれて。お前を傷つけるのは、わかってたんだけど…」

「はは、お前のその律儀なとこもさあ、可愛くてしょうがないよ。でさあ、竿とかはこっちで用意するから、予定だけ決めちゃおうぜ」

「うん」

この時の私は、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった

そして、見かけによらず懐が深く、”優しい”テツヤのこと、また好きになっていった




更新日:2019-09-05 23:22:11

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