- 3 / 12 ページ
その3
その3
ケイコ
矢吹先輩、その後の説明はテツヤに譲った
「でもその後すぐ、矢吹先輩に影響された女子がどんどん入ってきたそうなんだ、空手部に。そんで、今じゃ女子部できて。それで先輩は陸上部もこれを機に、女子部設立まで持って行きたいって。ねえ、先輩…」
なるほど…、実際にそういう経験あるんで、大月さんの気持ちは理解できるってことだよね
先輩はニコッと笑って、ゆっくりと頷いた
そして、テーブルに肘をついていた両手の、こぶの目立つ拳を閉じたり開いたりしながら、矢吹先輩が再び口を開いた
「そりゃ、そうだよ。女がたとえ一人でも、やりたいことやろうって勇気出して立ち上がってるのに、それ後押しできなきゃ、何のために南玉で気張ってんのかってことでしょ。南玉内だけで気勢上げてるだけなら、そんなもんいらないよ」
うん、私もエラそうなことは言えないが、まさにその通りだと思う
さすが、2年で南玉のナンバー3に就いてる人だけあるよ
「はは、外部の人にそこまで言っちゃまずいか。でも、まあ横田さん、ご苦労だけど、この件は今後ともこのテツヤを助けてやってね」
そう言うと、矢吹先輩は私に向かって頭を下げた
「あ、先輩、そんな、私なんかに気を使わないで下さい。私でできることは、精いっぱいやらしてもらうつもりですから」
「そう、ありがとう。今日は会えてよかったわ。じゃあ、私、これで失礼するから。二人のお邪魔はしたくないし(笑)」
「えー?先輩、パフェ、まだ来てないっすよ」
「私の分、あなた達で突つきあいなさい、仲良くね…(笑)。それとテツヤ、そろそろ”本物”の彼女、作ってさ、ねえ。アンタの女好き、結構それで治るかもよ。逆療法ってやつでさ…、ハハハ」
「先輩、勘弁してくださいよ。まったく…、やだなぁ」
テツヤ、顔が真っ赤だ、はは…
...
「じゃあ、ごゆっくりね」
そう言うと、矢吹先輩は、レジでまだレシートも来ていない”勘定”を済ませてくれたあと、私たちを振り返り、手を上げて会釈した
私とテツヤは立ちあがったまま、レジ前の矢吹先輩に一礼して見送った
「いやあ、あの先輩、いいなあ。いっぺんでファンになっちゃったよ、私」
「そうだろ。オレもさ、敬愛してんだ、あの人のことは」
そう言えば、この前この店ん時、組織関係なしでも矢吹さんにはついて行く気があるって、そう語ってたな、こいつ
どうやら、矢吹先輩の方もテツヤを可愛がっているようだし
矢吹先輩が帰って間もなく、パフェが”3つ”やってきた
私たちは結構大きな声あげて、会話を弾ませながら、まず目の前の1個目を平らげた
先輩の分はお言葉に甘えて、テツヤと正面を向きあって、突つきあった
テツヤとの話はいつもテンポ良く、尽きることがない
3つ目を二人で食べ終わったあと、私はトイレに行った
ああ、楽しい…
テツヤ、楽しいってば、二人でいる時間が…
...
トイレから戻ってイスに座ると、テツヤはさっきまでとはちょっと様子が違って見えた
そして、唐突に言った
「なあ、おけい。今度、釣り一緒に行かないか?」
「え?なんだよ急に…。ああ、そうか、お前、釣り好きなんだっけ。この前、朝礼台んとこで”釣りバカ”のマンガ読んでたっけな、ハハハ…」
「うん、川釣りなんだけどね、今はもっぱら。で、川釣り、お前と行きたいんだ」
「ああ…、それでさあ、釣り仲間とかいっぱい来るのか?まあ、お前のことだ、あの毛染めたケバ連中とか、女ばっかりなんだろ、どうせ」
「いや、お前と二人だよ。いやか?」
その時のテツヤの表情は、いつもと違って真剣そうだった
なら、私も真剣に答えなきゃ…
ケイコ
矢吹先輩、その後の説明はテツヤに譲った
「でもその後すぐ、矢吹先輩に影響された女子がどんどん入ってきたそうなんだ、空手部に。そんで、今じゃ女子部できて。それで先輩は陸上部もこれを機に、女子部設立まで持って行きたいって。ねえ、先輩…」
なるほど…、実際にそういう経験あるんで、大月さんの気持ちは理解できるってことだよね
先輩はニコッと笑って、ゆっくりと頷いた
そして、テーブルに肘をついていた両手の、こぶの目立つ拳を閉じたり開いたりしながら、矢吹先輩が再び口を開いた
「そりゃ、そうだよ。女がたとえ一人でも、やりたいことやろうって勇気出して立ち上がってるのに、それ後押しできなきゃ、何のために南玉で気張ってんのかってことでしょ。南玉内だけで気勢上げてるだけなら、そんなもんいらないよ」
うん、私もエラそうなことは言えないが、まさにその通りだと思う
さすが、2年で南玉のナンバー3に就いてる人だけあるよ
「はは、外部の人にそこまで言っちゃまずいか。でも、まあ横田さん、ご苦労だけど、この件は今後ともこのテツヤを助けてやってね」
そう言うと、矢吹先輩は私に向かって頭を下げた
「あ、先輩、そんな、私なんかに気を使わないで下さい。私でできることは、精いっぱいやらしてもらうつもりですから」
「そう、ありがとう。今日は会えてよかったわ。じゃあ、私、これで失礼するから。二人のお邪魔はしたくないし(笑)」
「えー?先輩、パフェ、まだ来てないっすよ」
「私の分、あなた達で突つきあいなさい、仲良くね…(笑)。それとテツヤ、そろそろ”本物”の彼女、作ってさ、ねえ。アンタの女好き、結構それで治るかもよ。逆療法ってやつでさ…、ハハハ」
「先輩、勘弁してくださいよ。まったく…、やだなぁ」
テツヤ、顔が真っ赤だ、はは…
...
「じゃあ、ごゆっくりね」
そう言うと、矢吹先輩は、レジでまだレシートも来ていない”勘定”を済ませてくれたあと、私たちを振り返り、手を上げて会釈した
私とテツヤは立ちあがったまま、レジ前の矢吹先輩に一礼して見送った
「いやあ、あの先輩、いいなあ。いっぺんでファンになっちゃったよ、私」
「そうだろ。オレもさ、敬愛してんだ、あの人のことは」
そう言えば、この前この店ん時、組織関係なしでも矢吹さんにはついて行く気があるって、そう語ってたな、こいつ
どうやら、矢吹先輩の方もテツヤを可愛がっているようだし
矢吹先輩が帰って間もなく、パフェが”3つ”やってきた
私たちは結構大きな声あげて、会話を弾ませながら、まず目の前の1個目を平らげた
先輩の分はお言葉に甘えて、テツヤと正面を向きあって、突つきあった
テツヤとの話はいつもテンポ良く、尽きることがない
3つ目を二人で食べ終わったあと、私はトイレに行った
ああ、楽しい…
テツヤ、楽しいってば、二人でいる時間が…
...
トイレから戻ってイスに座ると、テツヤはさっきまでとはちょっと様子が違って見えた
そして、唐突に言った
「なあ、おけい。今度、釣り一緒に行かないか?」
「え?なんだよ急に…。ああ、そうか、お前、釣り好きなんだっけ。この前、朝礼台んとこで”釣りバカ”のマンガ読んでたっけな、ハハハ…」
「うん、川釣りなんだけどね、今はもっぱら。で、川釣り、お前と行きたいんだ」
「ああ…、それでさあ、釣り仲間とかいっぱい来るのか?まあ、お前のことだ、あの毛染めたケバ連中とか、女ばっかりなんだろ、どうせ」
「いや、お前と二人だよ。いやか?」
その時のテツヤの表情は、いつもと違って真剣そうだった
なら、私も真剣に答えなきゃ…
更新日:2019-09-05 23:21:18