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その2

その2
ケイコ



テツヤは私を見つけると、こっちへ向かってきた

アタマをへこへこ下げながら、”その女”をエスコートするように

さっきまでのときめきは、もう完全にどっかへ飛んでっちゃったよ…、ハァ…

あのバカが!

今日くらい二人で話ししようってくらい、気が回んねえのかね…?

「おお、おけい、お待たせ。今、チョコパ3つ頼んどいたからよ」

「あ、そう。テツヤ、さっき会うって言ってた”人”、その”女の人”か?この前連れてた”彼女”とは違うようだけど…」

私は座ったまま、ぶっきらぼうに言ってやったよ

「ハハハ、勘違いするなよ。第一、この人に言い寄ったら、オレなんかボコボコにされちゃうよ。まあ、紹介するわ。ウチの番格で南玉では2年の補佐に就いてる、矢吹鷹美先輩だ」

???

一瞬、頭がリセットされちゃったよ!


...



私はすぐに席を立ち、まずお辞儀した

「横田さん、はじめまして。テツヤがいつもお世話になってて。黒沼高校の矢吹です。よろしくお願いしますね」

この人、後輩に対してなのに、なんと丁重な挨拶なんだ…

「あ、ああ、こちらこそ、初めまして…。よろしくお願いいたします。で、あの…、私、滝が丘高校1年の横田競子です。あの、すいません、今、失礼な態度とって…」

私は慌ててて、ぎこちない挨拶になっちゃった

だけど、矢吹先輩はにっこり笑ってくれてるよ

私たち3人は腰を下ろした

はあ、びっくりした…

まさか、あの矢吹さんを連れてくるとは思わなかったわ

ふー…

でも、なんでテツヤ、今日この人を…

...



「実はさ…、今回大月の件で、おけいには骨折ってもらっててさ、先輩からもお礼を言われたいってことでね。”例の件”でもお前に世話んなったって、前々から先輩には話してたからさ。今日、いい機会だと思ってよ」

ああ、そういう事か…

「横田さんとは、一度会いたいと思ってたのよ。相川補佐からもよく聞いてるわ、あなたのことは」

「…そうですか。私なんかの新入生、気にかけててくれて恐縮です」

「うふふ…、聞いてるとおりね。あなた、まっすぐで」

矢吹先輩は体なんかはごつそうだが、本当に穏やかで、気さくな感じだ

思ってたのと全然イメージ違ったよ

失礼ながら、いつもピリピリしてるってタイプだと思ってたから


...



ここで、テツヤが咳払いしてから、話し出した

「…あのさ、今回の”共同部活”の件もね、学校側はさっき言った通り何とかなんだけど…。やっぱりさ、複数の外部の生徒がグランド使うとなると、一般生徒の側でもいろいろある訳よ。さすがにオレも1年だし、女好きで先輩男子には正直、目つけられてるからよ。ちょっとな。ハハ…、面目ないわ、その辺は…(苦笑)」

ハハハ…、まあ、そうだわ、新入生があんな派手に女はべらかせてりゃ、先輩だって面白くないよなあ…

「…でさあ、そこんとこをこの矢吹先輩が、仕切ってくれるってことでね。学校側は生徒間で問題が起きるのを、一番懸念してたからさ。先生たちも、先輩からの意向を聞いたら、了承してくれたよ」

「そうか、良かったね。先輩、お手数おかけしました。ありがとうございます」

「ううん。いや、実は私もさ、女だてらに空手部、去年入ったんだけどね。やっぱり、それまで女子はいなくてね、私一人でさ(笑)。全く一緒だったんだよ、今回と。それでね…」

そうか…

この先輩、空手の有段者だって聞いてたけど、1年の時は今の大月さんと同じ状況だったのか…







更新日:2019-10-05 18:41:42

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