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その1

その1
ケイコ



今、私は黒沼高校の校門脇に立っている

さっきまで、親善駅伝の場でテツヤが提唱した、例の”共同部活動”について、黒沼の先生との話し合いの場にいた

私は、参加各校の賛同の旨と、概ねの参加人員をまとめたレポート用紙を持参して、”先方”に説明した

自分の学校以外の先生に直談判なんてこと、初めての経験だったんで、かなり緊張しちゃったよ

でも、テツヤが要所要所をフォローしてくれたんで、ホント助かったわ

ああいう時のテツヤって、頼りがいがあって、一緒にいると心強いんだよな

そのテツヤは、黒沼高のPTAが撮影した駅伝大会のビデオを借りて、事前に校長先生やPTAの代表とかにも見てもらったようだ

当日、応援に駆けつけた先生からも、その経緯を捕捉してもらったらしいし、テツヤのそういった根回し、凄いわー


...



大月さんとも会って、話をしたんだよね

「横田さんだって部活で忙しいのに、いろいろ動いてもらって、申し訳なくって…」

彼女、恐縮してたよ

まあ、私はとりあえず、黒沼の防水グランド走れるって下心あるしさって、言っといた

実際あるし…、それは(笑)

テツヤは、これをきっかけに女子部員を増やしたい考えのようだ

すでに、校内の掲示板とかには、陸上部の女子部員募集のポスターも貼ってあったし

で、問合せ担当者は、しっかり南部徹也になってた…(笑)

あっ、テツヤがこっちに向かって走ってくるわ


...



「おけい、待たせて悪い。いま終わったよ」

「そんで、どうだった?」

「うん。まあ概ね、理解してはもらってさ。あとは何か問題が起こった時のさ、責任の所在ってとこでね。まあ、そこんとこはこっちで”対処”考えてるから、おけいは予定通りに各校へ手配してくれるか?」

「わかった。テツヤも大変だろうから、手伝えることは言ってくれ」

「ああ、サンキュ。それでさ、いろいろ動いてもらったから、チョコパおごるからさ。今日、時間大丈夫だろ?」

「えっ?うん、まあ。だけど、この前ごちそうになったから、今日は私が…」

「いや、いいって。それで、これからオレ、校内戻って人とも会わなきゃなんないんで、先行っててくれるか、この前の店。わかるかな、道?」

「ああ、大丈夫。じゃあ、先行って、水でも飲んで待ってるよ」

「はは…、すぐ行くよ。じゃあ、後でな」

そう言って、テツヤは校舎内へ戻って行った

いつものように風を切るように走って…


...



店に着いて、私は待ち合わせだからと、オーダーはせず、水を飲んでテツヤを待っていた

前回ここに来た時は、多美もいて、3人だったな

だけど今日は…

客観的に考えて、今日は、テツヤと二人っきりだよな、やっぱり…

なんか、ガラにもなく緊張してるのかしら、私…

ちょっとそわそわしてるし、こういうの、ときめいてるっていうのかな…

まあ、テツヤに関しては、あの自らも認める病的な女好きさえなければ大好きだし

時折こぼれ笑いしながら一人水飲んでる私…、傍から見たら、ちょっと不気味だよな(笑)

そんなこと頭で考えてたら、勢いよく入口のドアが開いて人が入ってきた

来た来た、テツヤだわ

ん…?でも、一人じゃないぞ…

わー、女一人連れてんじゃんか!

あれは、この前の毛染めた尻軽連中じゃねえぞ…、別の女だ

一体、何人の女囲ってんだ…、アイツ

ああー、アタマ、痛くなってきたわ…

救いようもないエロ野郎だ…、やっぱり

私の弾んだ心、一気にしぼんじゃったよ…





更新日:2019-10-05 18:31:25

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