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少年との再会

「ハ、ハ、ハックショーン!」
 鼻水をたらしながら王様は仁王立ちした。
「あのクソガキを呼べ!」
「クソガキ、と言いますと・・・」
 コメツキバッタのように頭をペコペコさせながら、侍従長が会見の間に飛び込んでくる。
「ワシがハダカだ、と言ったあの、おろかなクソガキだ」


 
数日後、ひとりの貧しい少年が王宮に呼び出された。
 
少年はボロボロの半ズボンに汚れたネイビーブルーの丁シャツ、両方のほっぺたを真っ赤にして、長い指をこれでもかとばかり鼻の穴に突っ込んでいた。
 「おい、愚か者。お前にはワシの服が見えんのか?」
  王様は今日もパンツ一枚。ブカブカした特大のパンツはゴムがゆるゆる。あまったお腹がプルンプルンふるえている。
 「見えないよ。だって王様はハダカだもの」
 

「あわれじゃのう。お前はおろかなだけではなく、身分もいやしいので、この高貴な服がみえんのだ」
「王様の服はみえないけど、パンツは見えるよ」
「ほう」
 王様はパンツを引っ張りあげながら、身を乗り出す。
「ならば、おまえはわしの下着が見えるよというのだな。ならばワシがどんな下着をつけているかあててみるがよい」
 

「クマのぷーさんの絵がついた真っ赤なパンツ」
(こぞうめ。だまされんぞ。魔法をつかいおって)
「だまれ! 魔法をつかってワシのふところをねらうおまえははいやしいコソドロであろう」
 そう言うと王様はブルブル

「ハ、ハ、ハックショーン」

 
王様がハダカだ、といううわさは、その日のうちに王宮内にたちまち広まった。しかし、家来たちは王様の怒りを恐れて、だれもそのことを口にする者はいなかった。

更新日:2019-09-04 01:15:41

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