• 9 / 13 ページ

その9

その9
夏美



「…ミキさんはどう見ますか?」

今日の真澄への執行部による聴取について、千葉へ発つ前のミキさんに尋ねてみたわ

「そうね…、まず、木戸さんが話したことは本当のところじゃないかな。その上で、木戸さんにこの話を持ちかけたOBの真意よね。で、どんな人なのかしら、そのOBの人って?」

「有川先輩と同期で、いわゆる赤塗りには反対の立場を貫いてきた人です。ただ、OB連っていっても幽霊部員みたいで、私も数えるほどしか会ってないんです」

「私は一度も顔見たことないっすよ」

そうだよな、私より下の代、○○OBは知らないかもね

要はその程度しか関与していない人が、”この局面”で、南玉の行く末を左右する提案を真澄名指しでしてくること自体、首を捻ってしまう訳よ


...


「荒子ちゃんたちはどう捉えているの?」

「とにかく執行部が直接話を聞いてからだと、真澄先輩にそう告げたそうです」

「そう…。でも、今はそれでいいんじゃない。仮にどうしても木戸さんを通じてじゃなくてはってことなら、却下でいいんだし」

確かにミキさんの言うとおりだ

でも…

「ただ、津波が文字通り真澄に右ならえで、何の意見も言わないってのがどうもひっかかって…」

「まあ、あの二人が通じるのは自然なことだし、新参の津波からしたら、口利きしてくれたOGの先輩だから、一歩引いてるってとこじゃないんですかね?」

あっこはさらりと流しているけど…

「あっこ、明日中に○○OB、執行部に出向くか返事よこすのよね?」

「はい。荒子が留守になるので、真澄先輩がその返答を鷹美にってことです…。たぶん夕方になるだろうけどと言ってましたが…」

「それなら、相川さん、その返答次第ね。まずは私が”こっち”の首尾、今日の夜にも報告するわ」

「はい、遠いところすいませんが、千葉の件、よろしくお願いします」

「ええ。こっちの方は任せて。こういうの慣れてるから。ふふ…」

うん…、さすが、こういう時のミキさんは頼もしいよ

ミキさんには今夜、千葉北部の○○市内に赴き、少女だけのチームに難癖をつけてきた地元暴走族との折衝ごとに立ち会ってもらう


...


「いやあ、女眠り狂四郎か…。ぜひ、その場に立ち会ってみたいもんですね」

「ふふ…、紅子さんとのハイガールズ時代は無数の武勇伝を残してきたそうだからね。今回もその1ページに加わるでしょ。この件はあの人に任せておけばいいわ。ケリがついたって一報が入ったら、さっそく”加工”の上、拡散の手配よ」

「了解しました」

ふう…、情報戦も本格的になってきたな…





更新日:2019-08-26 21:40:51

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook