• 7 / 8 ページ

その7

その7
アキラ



あれからどのくらいの時間が経過したかな…

ケイコちゃんとオレ、とにかくくっついてた

暑いのに、べったりだ

オレが結局、大阪に辿り着けなかった”あの日”の夜から、ずっと離れてたんだ、オレ達…

その間、二十歳を過ぎたオレはともかく、この子、高2で塀の中にも入ってた

そう思うと、汗がべっとりでも、離れられないって

クソッ、この夏!

何なんだっての!


...



オレの左手を”ロック”していたケイコちゃんの右腕、震えが止まったな

左斜め下に視線を遠慮がちにおろし、ケイコちゃんに言葉を投げかけてみた

その第一声には、思いのほか、エネルギーを要したよ

まるで、瀕死状態の大切な人間に、”息吹”を吹き込まなきゃって

ぶっつけ本番、それは、まさにそれだった

その”息吹”たる言葉は、ごくありふれたものであり、かつ、へんてこりんだったかもだ

「ケイコちゃん、そろそろ話しかけても、ほんとに大丈夫か?」

「…」

彼女はとりあえず無反応だった

「じゃあ、しばらくこのままでいよう…」

二人はひたすら汗を流し合いながら、ちゃんと会話できるまでの時を待っていた

まあ、そういうことだよ

オレ達の今、言ってみれば、まるで七夕の夜だもん

いや、昼だ




更新日:2019-08-23 23:14:08

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook