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激闘/その7

激闘/その7
砂垣



剛と豪…

男と女…

ハンデなど、当事者のアタマにはまるで無しのホンモノの戦い…

今繰り広げられている二人の凄まじいぶつかり合いを形容するには、この言葉以外、見当たらないさ

真正面から小細工抜きの、まさに力と力の激突…

体力の限界を超えていても、なお、相手に突進していく

アイツら、もう意識なんてないんじゃないのか

ここに立会ってる人間は、この期に及んで、”余分”なコトなど頭から追い出しちまってるよ

眼前の決着を見届ける…

ただ、そこに行き着いてる


...



ほぼ同時に起き上がったバグジーと祥子は、すぐざま互いに向かって行った

パンチ、キック、ひじ打ち…

二人はもう原始的な殴り合いに終始していた

この二人、どこまで続けるつもりだ…

双方とも顔面を腫らし、祥子の口元からは血が流れ、バグジーも鼻血を出し、まぶたは片方が切れてるし…

ここまで来て戦いをやめない二人の様は、正直、残酷な光景ではあるだろうけど、どこか神々しくもある

両サイドの声援はもはや、聞き取ることなどできないほど交錯し、ここは何とも不思議な空間が出来上がっているよ


...



先に膝を落としたのは祥子だった

だがヤツの不屈の闘志は、そのまま倒れることを許さないようだ

体をフラつかせながらも、まるで何かに憑りつかれたように腰を上げ、ゆっくりとファイティング・ポーズをとった

バグジーは肩で息をしながら「行くぞー!」と叫び、右足を相手の胴体へめがけて、突進していった

だが…

「コノヤロー、喰らえ!」

なんと、祥子のヤロウ、バグジーの脚を払うような右からのハイキックを打ち込んでいきやがった!

何て無茶なマネを仕掛けてくるんだ

恐いもの知らずのとんでもないヤツだよ、祥子って女は…


...



「ギャー!」

「うー、ううっ…」

絶叫したバグジーは足首のあたりに両手をあてがい、祥子は蹴った右足の甲に手を当て、苦痛の声を漏らしている

ジャッジは膝を着いている両者を交互に覗き込んでいるが、まだダウンを宣しない

今度は祥子が先に立った

だが、すぐに膝で両手を支え、もうフラフラの状態だ

バグジーはその数メートル先で足の痛みに耐えながら、必死に立ち上がろうとしてる

祥子は腰を折ったままで、じっとバグジーが構えるのを待ってるようだが、コイツの息も上がってるし…

もうこいつら、限界かも知れないぜ

向こうのサブ、白石もその辺を念頭に、盛んに横田とこっちのサブであるモリタクに目線を送っている

だが、数秒後の出来事だった

バターン…、バターン…

瞬きする間に、何とバグジーの体は正面から倒れ、続きざまに祥子もばったりと地面に寝ころんじまった

なんだよ、どうなってんだ!




更新日:2019-08-23 22:40:35

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