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激闘/その4

激闘/その4
夏美



「おい…、何なんだ、あれは…!」

南部さんは、驚きの表情でそう漏らした

私達の目の前に展開する光景... 

それは、あまりにもショッキングなものだった

祥子は顔面をワシ掴みにされたまま引き起こされた体を、さらに引きずれて放り投げらてる

要するに、顔面掴み投げだよ!

私たちの陣の前に倒れた祥子には、起き上がる寸前のタイミングでバグジーが右足を使った踏み倒しを浴びせ、まるで人形のように吹っ飛ばしてるてるし…

「…」

その壮絶なシーンの連続に、さっきまでの大歓声は消え失せていたわ  


...


「…そうだったのか!手のひらが規格外のサイズなら、足も大きいはずだよ。うかつだったわ。スパンが30センチ超と分かっていたんだから、よくよく考えればこの”戦法”は読めたのに…」

「どう言うことなんだよ、鷹美!」

テツヤ君の隣で呆然として固まっていたあっこは、もう噛みつかからんばかりの激しい口調だった

「さっき、踏みつけに入る前、ヤツはちらっとこっちを見て、右手を開いてつま先からかかとまでを触れていたのよ。足は明らかに右手のスパンを超えていたわ。バグジーはそのバカでかい足の裏を活かしたキックというより、踏みつけ、踏み倒し技をマスターしていたのよ」

「…たしかにデカけりゃいいってもんじゃないだろうが、破壊力を上げる蹴り方というか、踏みつけ方を修練していたとしたら、恐ろしい攻撃になり得るか…」

「しかも南部さん、ヤツのシューズを見てください。あれは特製のブーツですよ。明らかに足とのフィットを意識して、威力を最大限にできる方策を工夫してのことでしょう。あんな”足”をまともに受けたんじゃ、祥子もたまらないわ…」

そう懸念を口にした鷹美ではあるが、さっきから盛んにメガホンで祥子の名を連呼している

何やらサインらしきものを送り、指示を出している様子なんだけど…


...


「わー、首を掴んで吊り上げたー!」

テツヤ君は驚きを伴った大きな声をあげたわ

「あれです!あの吊りがバグジーの必殺技ですよ!」

最前列に陣取っていた2年の新村静美が、目の前の二人を指さして叫んだ

ここでとうとう出たのか…

「鷹美!」

「矢吹さん!」

ここにいるみんなは、思わず鷹美を振り返ってる

おそらく胸の内で同じことを考えて…




更新日:2019-08-23 23:49:43

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