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その10

その10
夏美



「議長…。有川先輩の指摘に基づく真澄の疑念を全面的に認めたからには、除名されても異論ないわ。決議を受け入れますので、進めてください」

私は絞り出すような声で、議長である荒子にそう進言した

「先輩…」

荒子も鷹美も何ともつらそうな表情をしてくれてる

それだけでうれしいよ

私も辛いし、悔しいけど、今の執行部まで道連れにはできない

そうなったら南玉は終わりだもん

本郷の思うままになる

この局面は私の首だけで収めないとダメだ


...


決議は出たわ

棄権が多かったが、私の除名は決した

幹部会はその後、ドッグスメンバーが戻って形式的な進行で間もなく閉会となった

私のもとへはみんなが寄ってきてくれ、明らかに同情してくれてる

私は胸がはち切れそうだった

この時期に、なんとしてもあの本郷を排除しなければならなかったんだ

どんな手段を使ってでも…

だから、その決断に後悔はないわ

何しろ、本当の闘いはこれからなのよ

今後は、南玉の外からみんなと協力して力を尽くす!

私は決意を新たにして、本郷打倒を心に誓ったわ


...


そして有川先輩が声をかけてくれた…

「夏美…、君には気の毒なことをしたと思う。近いうち、今話せないことを夏美には明かす。いろいろあったんだ、みんなの目に見えないところでも…。だが、夏美はいつだって、南玉連合のことを思って行動していた。これは俺たちもみんな、わかっているよ」

「先輩…」

私はまた涙が溢れてきた

私は今になってわかったんだ…

先輩たちの中にも、いろいろと大人としてのしがらみが生じていたことを…

それでも、女性主体勢力に否定的な声を抱えながら、苦労しながら、長い間ずっと調整してくれていたんだよ

私達はそれに甘えて、任せっきりだったんだ

「先輩、ずっと、ありがとうございました。…すいませんでした」

私は泣きながら、先輩に感謝の気持ちを伝えた

心から…


...


「相川先輩、以後はあっこを通じてってことでお願いします。それでよろしいですか?」

荒子は小声でそう問いかけてきた

そばでは鷹美が横目でこっちを伺ってるしね

「うん、今後のことはそれで頼むわ」

彼女たちも承知しているんだ

これからが本当の戦いだってことを…

...


今後の南玉窓口となるあっことは、その夜のうちにファミレスで会ったわ

「トリプル・クーデター…、ですか…?」

「そう…。昨日と今日を冷静に分析すると、本郷は3つの仕掛けを用意していたということが透けて見えたわ」

「その3つって…」

「まず、本郷の辞任届よ。一見、南玉幹部の反感を増大させた挑発行為に映るけど、実際はアリバイ作りね」

「何のですか…」

「本郷は処分を突き付けられる前に、さんざん荒子の理念推進の理解と、それに基づく自らの行動を主張したわ。あれは誰に向けたものだと思う?」

「そうか!あくまで荒子の推進者としての立場として除名されたという絵柄で、他県の後発組織にアピールしたってことですね?」

「それもあるわ。でも、本当のアピール先は紅組離脱メンバーよ。特にリーダー格の片桐さんへの発信を念頭に入れたものだと思う」

「先輩!じゃあ、それって…」

...


「あっこ…、今回の幹部会の結果こそ、片桐さんらが南玉を出た本郷と事実上組むための、大儀名分になったのよ。ミキさんは、当初から紅組を出た立場なので、それなりの大儀がなければ岩本一派らと連携はできないと見切っていたわ。片桐さんらにとって、他県勢力が南玉から岩本側にすり寄ったことだけじゃ、不十分だった訳。どうしても、南玉の内部対立の表面化によってもたらされる旗印が必要不可欠だったのよ」

「なるほど…、本郷はその状況を見事、南玉内の人間として作り出したってことか…。なんて恐ろしい1年坊なんだ!」

あっこはここで大きくため息をついてから、目の前のお冷を一気に飲み干していたわ…

ヤツは銃口とドスの切っ先、同時だ…

はらわた煮えくり返ってるけど、とにかくそれを見据えてだ!

何しろ個々じゃ到底かなわない相手なのよ、本郷は

なら私たちは、総力を結集してヤツに向かっていかないと…






更新日:2019-08-23 22:00:06