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その1

その1
ケイコ




序盤から早速クロー技が出たけど、祥子は割と短い時間で脱出に成功した

並外れた握力の持ち主であるバグジーさんの掴み技への防御、かかった際の脱出フローは、それこそ重点的に訓練していたからね

腹部を狙ったクローへの対策は、矢吹先輩が伝播したものだよ

クローを外し、態勢を逆転させ、そのまま反撃にスライドさせる…

しかも、この右腕をキメるコンビネーションでは、以後、相手の主武器である掴み技での威力を落とせる効果も見込める

矢吹さんはこの展開に入った場合、少なくとも2分は攻め続けるようにと祥子へ指示していたんだ

すでに1分を超えているから、このパターンでは、想定通りだよ

私は頭ではそんなことも考えていたが、ジャッジとして、バグジーさんへのギブアップの意思確認と、双方の反則攻撃に対してはチェックを怠らなかった


...



柔道技でもある腕ひしぎに入って、だいたい2分近くってところで、バグジーは両足と肩でブリッジの態勢を取った

これって…、攻めている祥子にとっては、力加減を分散させられるんじゃないかな

そう思っていたさ中、バグジーは”ウォー”と奇声を上げ、勢いをつけて右側へ体を放ると同時に、左手をギュッと伸ばし、何と腕を決めている祥子の顔面にクローをかけたよ!

両手両足が相手右腕への攻撃で塞がってるから、確かに顔面は丸空きだったんだけど…

うーん、これは…


...



利き腕でないとは言え、スパンは右手とほぼ同じだろうから、かなりの握力なはずだ

祥子も予想外の左手からの顔面掴みに、思わずバグジーの右腕を離しちゃった

そして、かなり苦しそうにバグジーの左手首を掴んで、その喰いついた掌を外そうと必死だよ

矢吹さんは顔面を掴まれた場合、1分以上かけられないようにと、祥子にレクチャーしていたんだけど…

左手からのクローも祥子と矢吹さんは想定していた

だけど、こういう態勢からくるケースは想定していなかったんじゃないかな…


...



そろそろ1分近くになるぞ…

今度は祥子にギブアップの意思確認だ

「ノー!」

祥子は大きな声で、拒否してきた…




更新日:2019-08-23 00:42:32

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