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その2

その2
夏美



南玉連合の臨時幹部会当夜、会場の近くで湯本敦子と落ち合った

「先輩ー!」

「おお、あっこ、今日はよろしくね」

「こちらこそ。…ええと、”例の決議”になればちょうどいい按配で可決になるはずですから、安心してガンガン行ってください」

はは…、とにかくあっこは猪突猛進で、こういう時は誠に頼もしいよ

それに、本郷追い出しはあっこがいち早く提案していたことだし、特別に気合が入っているんだろうね(苦笑)


...


会場に入ると、主だったメンバーは大体揃っていた

本郷も津波と一緒に廊下で立ち話をしていたが、私らに気付くと一礼してきた

思い出すよ、アイツと初めて会った日をさ

その時も幹部会の場で、こうして廊下であいさつを交わしてね

その瞬間、お互い嫌い合って、以降、二人は会えばいつも視殺戦だったわね

ふん、これで最後よ

亜咲をうまく担いで南玉へ潜り込んだアンタは、まさにやりたい放題で掻きましてくれたわね

南玉内部に所属しながら、南玉だけでなく都県境のフレームを壊す行動に出た

そして、今また更なるスケールを以って企みを仕掛けてきてるんだ

そんなもの、何としても阻止よ!

私は麻衣と視線をぶつけ合いながら、ヤツに改めて宣戦布告をしたわ


...


「ああ…、先輩、お疲れ様です。あっこもご苦労さん。あのう、土佐原先輩ちょっと遅れるそうでが、先に始めてくれと言ってるんで、いいっすかね?」

荒子は真っ先にそう言ってきたわ

「うん、そうね。そう言うことなら始めてようか…」

まあ、昨日土佐原先輩からは、取りまとめの感触は得てるっていうことだったし、こっちの方針で進行していこう


...


午後6時ジャスト…

さあ、臨時幹部会のフタが開くわよ

「…それでは、これより臨時の幹部会を始めます。ええと、今日の議題は既に周知のとおり、県外の各後続勢力が墨東会から離脱した岩本グループと協調路線を敷いた件につき、南玉の対処を測って行きたいと思うんだが…」

議長の荒子によって議案説明は進み、荒子体制の南玉連合が県外後続勢力との意思疎通をおろそかにした結果、岩本真樹子率いるその勢力が県外各グループの受け皿となった現状を告げた

「…では、直接、南神奈川の波沢さんらと会談した真澄先輩にその経緯をここで報告してもらおう。先輩、よろしく…」

真澄の報告は執行部会の時と同様だった

彼女の穏やかな表情も…

ここに来ても真澄の真意が今一、掴めないなあ…

ちょっと不気味ではあるが、今日の最優先事項は本郷の除名決議だ

とりあえず、真澄の態度はスルーだわ




更新日:2019-08-22 22:33:40

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